滅びの前のシャングリラ (単行本)
滅びの前のシャングリラ (単行本) / 感想・レビュー
さてさて
私たちはどんな事態が発生しても一方で頭の片隅には”その先に続く未来”を前提にその時の行動を決めている側面があると思います。しかし、この作品の大前提である”その先に続かない”立場に置かれた場合には、私たちはどのような行動を取るのでしょうか?壮絶な設定を背景に丁寧に紡がれる人の心の機微を見るこの作品。リアルに展開されるカウントダウンの日々を生きる人達の姿にすっかり心を囚われたこの作品。そして読後もしばらくあれやこれやと考えてしまうこの作品。凪良さんからドスンと重いものを最後に手渡されたように感じた絶品でした。
2021/03/13
パトラッシュ
地球最後の日が来ると知れば何をするか。その日まで時間があれば『三体』のように生きる途を求めてあがくだろうが、わずか1か月しかなければ「どうせ死ぬのだから」と人は確実に壊れる。立場も教養も金銭も無意味になった自称文明人が略奪や暴力や殺人に明け暮れる中で、それまで普通の生活を送れなかった4人が殺人被害者の家に住み着いて時間限定の幸福な家族となる逆説。滅亡が目前だからこそ虚飾をはぎ取られた人びとが、地獄へ行くかシャングリラを選ぶかは僅かな差だ。好きな歌を聴き歌いながら最後の瞬間に希望を感じるラストは輝いている。
2022/01/28
starbro
凪良 ゆう、3作目です。本屋大賞受賞後第一作は、一か月後に小惑星が衝突する単純パニック・SF小説かと思いきや、読み応えのある人類が生きることを問う家族の物語でした。 https://www.chuko.co.jp/special/shangrila/
2020/11/18
黎明卿(禍腐渦狂紳士タッキー)
【神さまが創った世界では叶わなかった夢が、神さまが壊そうとしている世界で叶ってしまった。ねえ神さま、あんたは本当に矛盾の塊だな】一ヶ月後に小惑星が衝突し地球は滅びる。不可避の終わりを宣告された世界で、友樹・信士・静香・Locoの人生を上手く生きられなかった4人の足掻きと最期に見つかる青い鳥が感動的でした。登場人物の視点が変わるけれど物語が繋がっているのが面白いし、それぞれが抱く幸せの形が尊い。もし、現実の世界でも同じことが起きたら自分だったらどうするのか、想像しながら読むのも楽しみのひとつですね。
2020/10/09
のいじぃ
読了。1ヶ月後に人類終了のお知らせとそれまでの生き様、心のありよう。短編連作集。小冊子込み。正直に書けば「またか」。作者が違うのにどうしたことだろう、暴力、ヤクザ、家庭環境、書き出しのインパクトの付け方といい、先に読んだ本と類似している、自分には記号のようにしか映らない。違うのは勧善懲悪ではなく、より自然に心情とその変化が描かれている視点の広さ、深さ、人の在り方。その点はこちらの方が馴染みやすい。それでも最後にどこにでもありそうな歌姫の話を持ってきたところで台無しにされてしまいましたが。/ 終末の過ごし方
2021/07/04
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