花は散っても (単行本)
花は散っても (単行本) / 感想・レビュー
いつでも母さん
時代と家に翻弄された年頃の娘二人の人生を、一本のドラマを観るような貪るように読んだ。嗚呼…なんてこと。引き裂かれた感情は両手にあまる。それでも魂は求めて離さないのが最後に伝わる。人が人を想う事の難しさと幸せを咲子が全身全霊で生きたのだなぁ。時代が違えば別の人生があったはず。あの日がなければ…あの人と会わなければと今更ながら詮無い事をつらつらと思う。今、人生を掛けて残された者たちが幸せならと、美佐の身の振り方を支持したい私だった。
2021/02/13
ちょろこ
好きな世界観、の一冊。時代箪笥に仕舞われた着物、写真、ノートがいざなう祖母の過去。少女達の無邪気な心、美と繊細に包まれた時間、昭和初期の時代の流れ。言葉を拾い心を味わい秘密を追っていく過程はとても好きな世界観で魅せられた。時代のうねりに巻かれやがて抗えない運命を受け入れる二人。"あの時"、あの決断が全てを変えてしまったとは。まるで着物を通じて二人の心のより深い場所に触れる感覚だった。苦しみも背負う、これも一つの愛なんだな。せつなさが残るけど美佐によって想いが紐解かれたこと、それがせめてもの救いと思いたい。
2021/03/19
のぶ
現在での主人公、磯貝美佐と美佐の祖母咲子の生き方の対比が面白く、心打つ作品だった。本書ではこの二人の章が、交互に著されている。美佐は39歳でアンティークショップを営んでいるが、子供が欲しいができず、治療に行っても効果は得られず、夫と離婚を考えている。ある日、実家の蔵を整理していると、咲子の物らしき三冊のノートを見つける。読んでみると戦時中の咲子の生活が、記されていた。そこで明らかになるある秘密。美佐の気持ちや行動も理解できるが、咲子の毎日の生活が美佐の生き方に投げかけられていた。期待以上の本だった。
2021/02/05
アン
アンティークの着物を扱かう仕事をする美佐。彼女は実家の蔵にある時代箪笥に仕舞われた銘仙の着物、ノートとセピア色の少女の写真を見つけ、亡き祖母の手記を読みはじめます。無邪気で愛らしい姉さまへの思慕の念、ミッションスクールに通った眩くかけがえのない日々。戦争という時代のうねりに巻き込まれ、運命のいたずらによって引き離された二人の想いは哀しいほど切なく心が震えます。祖母が守り続けた秘密と献身。春秋の季節を織り込んだ鮮やか着物が繋ぐ深い愛。新たな人生を歩み出す美佐の未来が力強く美しいものでありますように。
2021/08/07
sayuri
ドラマティック。一本の映画を観終えた様な読後感。この物語の主人公・美佐は谷中で着物のネットショップを切り盛りしている。ある日、実家の蔵で、簞笥に仕舞われた銘仙、謎の写真、三冊のノートを見つける。今は亡き祖母の咲子がしたためた手記から家族の歴史と秘密が紐解かれて行く。祖母の咲子と、咲子が崇拝する龍子。11歳で知り合い、戦禍を共に生き抜き、互いに一番大切な存在だと認め合いながらも、運命のいたずらで引き離されて行く二人がもどかしい。様々な想いが交差するも、二人が辿った過去から現在に繋がる生き様に胸が熱くなった。
2021/02/12
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