幸村を討て (単行本)
幸村を討て (単行本) / 感想・レビュー
W-G
実は密かに侮っていた作品。くらまし屋の新刊が延期になったっぽいので、じゃあ代わりに…くらいの気持ちで手に取ったら、今村作品中でも上位に位置するか?という大満足の読書となった。特に『政宗の夢』からのラスト三章が素晴らしく良く、これぞ今村翔吾という恥ずかしいくらいの青い熱血が炸裂してくる。今まで、戦国物の本を読んで、淀殿に好感を持った試しがないが、それだけに『勝永の誓い』は胸に迫る。終章の信之と家康の対話の流れも見事。ただし、タイトルを見て、かっこいい真田幸村を期待した人には消化不良の可能性あり。
2022/09/01
starbro
今村 翔吾は、新作中心に読んでいる作家です。直木賞受賞作『塞王の楯』も良かったですが、やはり歴史小説は著名な戦国武将が多く登場する本作の方が楽しめます。 大河ドラマ「真田丸」の記憶が甦りました。 https://www.chuko.co.jp/special/yukimura/
2022/03/29
しんごろ
それぞれの武将の想い、思惑が交錯する。そこに真田幸村が絡み、混乱を呼び翻弄される。敵も味方も大坂の陣とは別に、見えない敵と戦ってる錯覚に陥った武将達。真田雪村いや真田兄弟というべきか、すでに真田の術中に武将達が嵌まってる。このタイトルの意味がわかった時、鳥肌が立った。痺れた。真田一族の物語。いや真田兄弟の絆の物語か。ただ単に真田一族だけの物語ではない。大坂の陣で戦った武将達の物語でもあった。今村翔吾が描く武将達は、熱いことはもちろん、史実もこうあってほしいと思わせる。面白すぎてあっぱれである。
2022/05/17
パトラッシュ
豊臣方の敗北はわかっていたのに、なぜ真田幸村は大坂城へ入ったのか。味方の南條元忠や後藤又兵衛まで陥れたのみならず、夏の陣で今一歩まで家康を追い詰めながら討ち取らなかったのか。戦国最後の戦いの裏で展開された理由も目的も不明な謀略戦を察知した者は、敵味方を問わず恐怖して「幸村を討て!」と叫ぶしかなかった。しかも幸村のみならず兄の信之も江戸と大坂に分かれながら加わり、真田の家と誇りを守るため徳川も豊臣も自在に操って家康に負けを認めさせたのだ。どの作家も考えたことがない「歴史謀略小説」の波乱万丈な物語を堪能した。
2022/04/10
future4227
本屋の店長をやりつつ直木賞受賞という異色の作家さんの描く真田幸村。幸村をメインに据えながらも一人称としては描かず、彼に関わった7人の武将たちを主人公に、幸村を間接的に描いていくという連作短編集。なかなか面白い構成だ。そして爽やかでクリーンなイメージの幸村ではなく、ちょっとダークサイドな幸村を満喫できる。特に毛利勝永の話は感涙ものだ。幼き茶々との交流がどこまで真実かはわからないけれど、淀殿との関係がロマンチックで素敵。また、なんとも気の毒な南条元忠と日本最強の忍びとの絆もうるっとくる美談に仕上がっている。
2022/06/21
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