残像に口紅を 復刻版 (単行本)
残像に口紅を 復刻版 (単行本) / 感想・レビュー
mae.dat
次の章が始まる度に1音ずつ消失して行く世界。消失した音で表された物は、この世界線では存在しない物となるのね。無くなった音で、本来なら何を表現しようとしていたのかクイズ。分かり易い物もあります。それ自体をギミックとして遊んでいる所も少なく無いのでね。でも中盤辺りは難しい、分からない所もありました。その為、読むのに必要になる時間が余計に掛かりましたよ。その中盤の官能パートって言うのかな。そこは読むのも辛かったです。でも、最後に何があるのかを愉しみにして。実際2部後半から3部は急加速でした。お疲れ様です。
2024/09/22
史
なぜ単行本が復刻? まあ文庫版は今でも増刷しているし、公的機関向けなんですかね。とまれ、そんなリバイバルブームが起きている書籍ですが、徐々に減っていくサスペンス的な一章。どこか滑稽地味たものとなる二章。もう単語の羅列になっている三章で成り立っている。内容よりも文章や日本語の面白味を味わう作品でありましょう。しかし実験的あれども、文章的には初心者向けとは言い難い作品が跳ねるのは、やっぱり今の時代の学生さんはしっかりしてるんですなあ……。
2022/09/09
そらないわ
ゆる言語学ラジオでやっていた「残像に口紅をゲーム」。気になって、出典を読んでみたよ。 主人公の作家が物語の人物と認識しつつその世界を楽しんでいる、メタ世界。SFっぽい。 でも、お話が進むにつれて使える文字、言葉が消えていくんだ。すると、名前がなくなって、人物の存在が薄くなって残像のようになり、そのうち、かすかな記憶だけになってしまうんだ。その存在を忘れないようにって、記憶のなかの像に口紅を施すって、なんだか素敵だね。
2024/08/25
Hiro
作家である佐治は、世界から少しずつ音(文字)がなくなっていく物語を考えた。物語を書く現実の自分と、その物語に登場する虚構の自分とが重なりあって物語が展開していく。章毎に使える文字がなくなっていく世界を試行錯誤しながら表現し、逆に文字がなくなることで残像として表現されるものもあり、筆者得意の文学論やエロティシズムも展開され、そしてどんどん文字がなくなっていく。最後まで展開が読めず、そして文字がなくなり世界(物語)は終わる。深いようでいて、単なる悪ふざけのような、この筆者らしい作品になっている。
2022/10/04
みそ
個人名がなくなり役割の概念だけが残ったことに耐えられず消失する妻、作家同士のホモソーシャル的な嫌な雰囲気など、けっこう前半に見どころがあります。中盤の性描写と中綴はねらったふうもあってあざとく、嫌な感じです。
2024/08/26
感想・レビューをもっと見る