カラスは言った (単行本)
カラスは言った (単行本) / 感想・レビュー
シャコタンブルー
ベランダに止まったカラスが突然喋りだす。カラスの第一声『やっと見つけました』から始まる噛み合わない会話。何が起きているのだろう。奇妙な展開に興味を抱きながら読み進める。一羽のカラスが見知らぬ街へ港へ、そして海へと導く。その旅は丸森にとっては悪人からの逃避行でもあったが、いつの間にか悪人との間に奇妙な親近感が芽生えていく過程が愉快だ。本当の悪とは何だろう。立場や見方を変えれば誰もが悪にも善にもなる。安易に人や物事をジャッジする事の愚かさや脆さを覚えた。『立派な人間よりもカラスになりたい』同感だ。
2023/01/03
えみ
ある日窓辺に止まった一羽のカラスに呼びかけられる。「あなたを探していました」と…。「ヨコヤマ・アウスさん」と…。そしてフッと気付く、僕はヨコヤマ・アウスさんではないと…。カラスの勘違いから巻き込まれる騒動。僕は部外者か、当事者か。不可知論者の丸森とカラスのヨコヤマ・アウスさん探しの旅。シュールで滑稽。なんだか凄い方向に展開していって、予想外のカオスな結末にちょっと笑顔になれた。カラスは本当の意味でカラスになれたのかと思うと、どうしようもない存在・活動目的も意味ないものではなかったと妙にホッとしてしまった。
2022/12/28
Willie the Wildcat
自他を投影し、自他の媒体となり、そして自己確立の一助となるカラス。当事者vs.部外者、心底に抱え続けた”棘”(ココ)。半強制的な”旅”が、視点を拡げ(宇垣)、死角への気づき(岩田)となり、価値観を再考(横山)。物心両面でのさり気ない支え(ビリー)が、再興の礎。印象的なのが、横山の「信用可否vs.他者人格容認」の件。一見すると逆説的なリーダー論に、ふと立ち止まり、咀嚼に努めた。否定・裏切りへの恐れが正比例するのも自然なれど、信用vs.信頼、故の信頼也。
2024/06/17
ででんでん
斜め読みになってしまい、ほんとのおもしろさがわかっていないかも。カラスが喋るという設定から予想していた内容とは全く違っていて、そこは逆に楽しめた。ものすごくSFチックな作品なのかと思ったが、ある意味とてもとても人間だったなと思った。
2023/07/23
海の仙人
初読みの作家さん。最初はファンタジーかと思いきや現代の森林問題から端を発した主人公とカラスのちょっと切ないロードノベルといった雰囲気で、楽しませていただきました。少し気弱で、褒められると誰でも好きになってしまう主人公に共感です。それにしても横山さんはちょっとねー。まさか某公共放送のカラスじゃないですよね(笑)
2023/02/08
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