「傷つきました」戦争-超過敏世代のデスロード (単行本)
「傷つきました」戦争-超過敏世代のデスロード (単行本) / 感想・レビュー
HANA
現在欧米で猛威を奮う「アイデンティティ政治」や「キャンセルカルチャー」。それの実態を記した一冊。著者は古いタイプのリベラルなのでそれに気を付けて読む必要があるが、紹介された実例は興味深いものばかり。「ヨガはインドの文化を盗用するので廃止すべき」「トランスの役をノーマルな役者が演じるのは問題がある」等。この手の話を聞くにつれ、これって人種差別の裏返しではないかと思うんだよなあ。属性が本人より優先されるのは。最近欧米や我が国でも人文学への予算が減らされているが、こういう例を見るとむべなるかなという気になる。
2023/08/15
羊山羊
反レイシズムを、①アイデンティティ関係なし、待遇の平等の為、人間の普遍主義の要求の為に動く派。②アイデンティティの名目で特別待遇を得る、分離主義的な派の2種に分類し、②の若者間への流行を指摘・危惧していく1冊。アメリカ人が日本式の誕生会を開くだけで炎上するなど、中々トチ狂った話題がジャンジャン出てくる。ところで、②の方をアイデンティティ至上主義者としているがその主な流行先を若者と表現している。「サイキンノワカモノハ」論者に誤解されやすい表現であり、危険。→
2023/06/26
Iwata Kentaro
本屋で衝動買い。いやー、我が意を得たり。「属性」は正しさを決定しない。「ヒト」ではなく「コト」が議論の中心であるべき、とぼくはいつも言っているので(それで怒られてるので)本書は言ってほしいことを全部言ってくれた。黒塗り問題とか、炎上「不快」問題とか、アイデンティティ至上主義の問題点を全部明らかにした明快な本。が、本書のような明快な本が書かれて許されるのは筆者が女性でフェミニストでセクシャルマイノリティだから。他の属性の人が書いたら「炎上」していたであろう。結局属性じゃん。だから、十重二十重に皮肉な本。
2023/04/19
たつたあお
行き過ぎたアイデンティティー至上主義や犠牲者至上主義に疑問を呈する本。「白人一家が日本風のパーティーをするのは文化盗用」「キャラクターの属性(人種や性的少数者)に合った俳優を起用しろ」など、原理原則としてはわからないでもないが、暴走しすぎな事例が多々。左派が弱者に寄り添いすぎたばかりに、左派がもっとも嫌っているはずの極右的レイシズムと相似形(しかも暴力的)になっているのはなんとも皮肉。欧米の大学では、同じ属性の者ばかりがかたまり、教授は学生を「傷つける」ことを極度に恐れ、自由な討論もできないとか。
2024/06/09
kenitirokikuti
図書館にて。原著は2020年刊行。著者はフランスの女性ジャーナリスト、レズビアン、プロチョイスのフェミニズム誌創刊、同性婚の権利獲得運動、シャルリーエブドの求めるコラムニスト、イスラム原理主義の活動への批判する、など。こういう身の上だが、行き過ぎたポリコレやマイクロアグレッション、文化盗用、woke、アイデンティティ至上主義を極めて強く非難している▲左派系学生組合、フランス全国学生連盟(UNEF)がかつて準拠したのらトロツキズムだったが、勢力衰退により地方でムスリム同胞団寄りの団体と連携した。続
2023/04/23
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