欧州紀行 (中公新書 310)
欧州紀行 (中公新書 310) / 感想・レビュー
スズツキ
『死霊』で有名な著者の題名通りの欧州紀行。色々なところで名前が挙がっていてそれなりに有名なはずだが、読書メーターでは全く読まれていないようだ……。エッセイとして軽く読めるし、文化事情もダイレクトに伝わってきて良い本だと思うけど。キュルケゴールの墓を訪ねる時に「あの人、実存主義者っぽい」といってデンマーク人に話しかけるところがグッド。
2016/06/19
ダイキ
埴谷雄高を読むのは始めて。『死霊』など難解な作品が有名だが、本書は飽く迄紀行文の為、乗り遅れそうな飛行機に向って全力疾走したり、ぼったくりバーに誘引されたりといった愛嬌のある話が殆どで、時折小説を読んでいるかのようにも錯覚する。出入口からオーダーまで階級毎に峻別され、階級を弁えぬ者は上下を問わず無視排斥される英国のカフェに於て、被支配層の労働者達にまで階級意識が一種の「権利」として機能している現実に埴谷は「恐れ」を抱くが、人々の「矜持」や「尊厳」は良くも悪くもそういった「権利」からしか生れぬようにも思う。
2019/02/04
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