漢字百話 (中公新書 500)
漢字百話 (中公新書 500) / 感想・レビュー
傘緑
「呪的儀礼を文字として形象化したものが漢字である。漢字の背景には、そのような呪的な世界があった」『万葉集』と『詩経』の比較研究という時代と国を跨いだ壮大な研鑽の果てに、漢字へと辿り着いた白川静。私にとって学者というより、今なお生き続けている古代の呪術の探求者、呪者として認知されている。「わたしは数々の系譜上の層を遡ってゆく…幾多の叙事詩、民族の侵寇を横断…あらゆる創造が可能である『神話』に到達せんがために(泥棒日記)」漢字文化圏に生きる者にとって日常言語の足下には、太古の世界の呪符が脈々と受け継がれている
2016/10/28
りー
殷周の甲骨文・金文の時代~日本における漢字の国語化までを解説する本。甲骨文・金文では一文字一意で、「文字はことばの呪能をそこに定着するものであり、書かれた文字は呪能をもつものとされた。」本の2/3は、読みながら、古代中国の呪術解説書を読んでいるようでした。それくらい、血の祭祀と漢字は分かちがたい。特に「犬は祓禳の儀礼に多く用いられ、祓いの旁はその形である。伏・祓・類・器などはみな犬の犠牲を含む字」という解説に背筋が凍りました。強烈な力を持つ文字を日常で使う意味を、私たちは自覚すべきなのかもしれない。
2020/01/12
sabosashi
名著中の名著という誉れ高し。 でも、ラディカル、つまり漢字というものを本来、生んだ社会の呪術性なるものまで遡って考察しているために、現代人のわれわれにとっては初めは違和感を感じてしまいそう。 しかし昔の世界はおどろおどろしい、禍々しいものが人の暮らしにおおきな影響をあたてていたのだ。 読みながらそんな世界を追体験していかなくてはならない。 今さら言うまでもなく、ヨーロッパの学問は卓越している。
2019/11/29
かりんとー
(図書館)時間かかった…。後半の、漢字の歴史などが興味深い。
2021/01/11
wiki
全く触れたことのない分野に突入しようと思い読む。存外面白い。著者の問題意識はG・オーウェルの『1984年』にあるニュースピークにリンクする。漢字に魅了され、大家となられた白川先生からすれば、勢い簡体字に対して批判的になる事も納得出来る。簡体繁体問題は漢字版ニュースピークといったところか。書くときに大変だから画数を減らしたものが簡体字と聞いたが、PCで入力する事が専らとなった現代においては繁体字を再興すべきではと思う。ともあれ台湾で繁体字を学んだ1年間はその後の自分にとって非常に有用だったとつくづく思う。
2017/02/15
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