映画の真実: スクリーンは何を映してきたか (中公新書 1616)
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映画の真実: スクリーンは何を映してきたか (中公新書 1616) / 感想・レビュー
あきあかね
「この本は作品紹介でもないし批評でもない。映画は人間と社会の背負っているどんな問題をどんなふうにして引き受け、どんな具合に解決しようとしているものなのであるかということを、さまざまな角度から考えてみたものである。映画をつうじて人はなにを解決しようとしてきたのか。私にとってこれは果てしのない問いなのである。」 映画は歴史をどう作り変えるか、戦争と映画、反グローバリゼーションの映画など、種々の切り口から、また日本や欧米にとどまらない様々な国々の映画について語られる。通底するテーマは、映画で真実が分かるか、⇒
2022/05/15
oz
初読。佐藤忠男はおそらく世界で最も多作な映画評論家である。その映画論には一般観客である庶民心理への共感、娯楽映画の擁護という基底がある。この庶民性が映画産業の衰退や映画評論家の影響力の低下という荒波を超え、今日まで彼を第一線の映画評論家たらしめている。映画批評の領域はどこまでも拡大して映像批評となり、映画が映像コンテンツのワンジャンルとしか見なされなくなった現代では、映画ジャーナリズムがレビューとほぼ同義になってしまった。もはや彼のような専門の映画批評家が今後産まれてくる可能性はないだろう。
2017/05/21
つまみ食い
アジアやアフリカ諸国の映画をこれだけ見た人が日本に他にいるかと思わせられる筆者により、映画はただのフィクションなのか、社会の忠実な鏡なのか——こうした問題を問う序論から、映画で歴史を描くこと、社会を描くことの葛藤などが論じられていく。
2023/06/03
Gen Kato
「芸術とはすべてなんらかのかたちによる現実の美化である」からこそ、ひとはそれを生み出すのだし、また、触れたくもなるのだなあと深く納得。インド映画やアジア映画、もっと観たい。
2017/03/09
takizawa
「この本は作品紹介でもないし批評でもない。映画は人間と社会の背負っているどんな問題をどんなふうに引き受け、どんな具合に解決しようとしているものなのであるかということを、さまざまな角度から考えてみたものである(p.232)」。アジア映画や未成熟な作品への眼差しが暖かく、自分がなぜ映画を好きなのか思い出させてくれる。映画撮影を通じて自身の抱える問題を見つめ直したドキュメンタリー、「ファザーレス/父なき時代」はぜひ観てみたい。
2012/03/11
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