ヒトラーの時代-ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか (中公新書 2553)
ヒトラーの時代-ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか (中公新書 2553) / 感想・レビュー
rico
結局人を動かすのは「パンとサーカス」なのか。巨額の賠償金による破綻、政党間の争い。うんざりしていた国民を巧みな演説とメディア戦略で惹きつけ、様々な施策で景気や雇用を回復させ、圧倒的支持を獲得。一方、耳障りのいい言葉で装飾した独裁法ともいうべき法律を次々と通し、異論を封じる。独裁体制確立。それをわずか1年で成し遂げてしまう。「ナチスの手口を学んでは」と言った政治家がいたが、別の意味で同意。人はかくも簡単に独裁者に熱狂してしまう。また、同じ過ちを繰り返さないためにも、向き合う必要がある。それは日本も同じ。
2019/12/05
佐島楓
ハイパーインフレなどの社会不安を背景に、民意の力を得、第1党にまでのし上がったナチス。肝心なのは、政権を奪取するまではあくまで民主的な選挙によって選択されたということ。ナチスの危険性は予見され、警告する文化人もいながら、独裁国家を許してしまったということ。とても重い教訓であり、あの戦争から「まだ」74年しか経っていない。
2019/07/23
trazom
8月に亡くなられた池内紀先生の遺稿とも言える一冊。生前、カントの「永遠平和のために」の素晴らしさを熱く語っておられた池内先生が、「ヒトラーの時代」を描くことを通じて鳴らそうとされた警鐘が胸に刺さる。ナチスが、民主的な手続きで選ばれ、重要な政局(国際連盟脱退、再軍備など)では常に国民投票が実施されてきた政権であったことをどう考えるのか。「ユーフェミズム」というレトリックが、かくも簡単に国民を欺くことができるという事実をどう理解したらいいのか。ヒトラーが出現した時代の危うさは、正に、「現代」そのものである。
2020/01/01
ゆう。
世界で最も先進的と言われたワイマール憲法下で、なぜナチスが独裁までのぼりつけたのか、とても勉強になった。今の日本に結びつけたとき、教訓にすべきこともあるように思った。
2019/11/17
やま
池内紀の遺言になってしまった一冊。著者のこの時代について調べて分かったことを伝えたいという思いがひしひしと伝わってくる。2019年5月にあとがき、同年8月に亡くなっている。◇池内紀はドイツ文学者で、NHKのドイツ語講座を長く勤めていた。訳本も「ブリキの太鼓」「カフカ」など多数。そして、ドイツ文学の専門家の立場からヒットラーの時代についてまとめなければならないと思っていたらしい。◇ナチスがどうやって政権を握ったのか。正当な国民投票の結果とされたりもしているが、その欺瞞性を示唆している。
2021/03/22
感想・レビューをもっと見る