イデオロギーとユートピア (中公クラシックス W 46)
イデオロギーとユートピア (中公クラシックス W 46) / 感想・レビュー
てれまこし
知識社会学入門書は、近代自然法思想後の哲学の可能性を論ずるものとしても読める。客観的秩序が否定され、思想は歴史的存在と切り離せないことが明らかになった以上、従来の哲学は不可能である。しかし、知的エリートは否定されない。それ自身階級的利害を持たない知識人のなかにその地位を保つ。哲学者とちがって、近代知識人は静的な秩序ではなく歴史を動かす動因に関する社会学的態度の保持者である。彼はもはや普遍的知を主張しない。ただ自分の立場の有限性を意識し、歴史のなかで全体が姿を現す可能性に自らを開いていると主張するだけである
2019/05/21
羽生沢
序文と三本の論文から成るマンハイムの著作集。抽象的で読み切るには骨が折れるが、政治学を学ぶ人や知的生活を志向する人にとっては読む価値があると思う。
2015/02/27
ぽん教授(非実在系)
カール・マンハイムによるイデオロギー論。今日使われるイデオロギーの意味を決定付けた記念碑的著作であり、分析の切れ味も鋭い。結局分析だけではだめで綜合も不可欠であるという主張にはまさしく同感であるが、その方法が歴史主義であるというところに時代的制約を感じる。
2015/08/15
タイガ
https://note.com/okasodayo047/n/n0a9ced2dae36?magazine_key=m08beeaaed047
2022/02/07
井蛙
マンハイムは思想が歴史・社会に規定されていると考えている点で相対主義者である。この事実から現状維持を志向するイデオロギー、改革を目指すユートピアが出てくるわけだが、知識社会学はこれらの言葉を敵対者の相対性を駁論する武器としてではなく自身の相対性とその社会的連関を積極的に引き受ける戦略として認める。そうした知の担い手は階級意識から比較的自由な浮動する知識人であるとされる。ならば知識人の位格そのものを疑うアウシュビッツ後のアドルノが手厳しくマンハイムを批判したのも故なきことではないだろう。
2018/01/29
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