どくとるマンボウ航海記 (中公文庫 A 4-3)
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どくとるマンボウ航海記 (中公文庫 A 4-3) / 感想・レビュー
nemuro
久々な小旅行。減便などの可能性もあり念のため時刻表を購入。「週末に2泊3日」で検討。思えば特急列車に乗るのも宿泊で出掛けるのも昨年8月、函館での知人の葬儀以来。そうだ函館、せっかくなので津軽海峡を越えて(というか海峡の下を潜って)青森まで。富良野駅の窓口で渡された切符は12枚。延べ乗車時間が15時間余りで乗り換えが8回。ふむふむ。そんな小旅行に持参。1958年、漁業調査船・照洋丸での航海記。ヨーロッパが実に遠く凝縮された半年間が面白い。帰路、修学旅行の中学生たちの会話が弾む「特急北斗11号」車中にて読了。
2021/10/31
めがねまる
北杜夫さんはユーモアに溢れた作家さんで、些細なところでフフッと笑わせられる。はい笑うとこですよ、という大げさなものではなく、自然と湧いてくる笑いだ。この航海記は、大事なこと、重要な出来事はあえて書いてないそうだが、却ってその方が船の上にいるような気になる。読み終わるのが惜しく、最後の章ではさみしさがある。彼は詩情のある方で、海や心象を投影した風景の描写は詩人めいて美しい。何度も読み直したいので新書で買おう。ちなみにイラストもユーモラスでかわいい。
2016/12/21
山口透析鉄
北杜夫氏の文庫本も、中高生の頃から読みだし、概ね読了しました。 個人的に一番好きなのは「幽霊」なのですが、この本に始まるドクトルのシリーズも、無論、大好きですね。 担当編集者の宮脇俊三氏、この本がベストセラーになって、北杜夫氏が購入した家の隣に家を購入されて、交友関係はずっと続いていたようですね。北杜夫氏のエッセイでも、仕事ぶりが随分と熱心で、と書かれていたので、やはりエース編集者だったのでしょうね。 ユーモラスなエッセイに、多くを学んだ気がします。読み継がれて欲しい本ですね。
1983/08/27
ムーミン2号
北杜夫作品は数編読んだが、「どくとるマンボウ」シリーズはお初。面白かったというより、氏の瑞々しい感性とすんばらしい文章力にほとほと感心してしまった。本書は1958年に水産庁のたった600トンの漁業調査船に船医として乗りこみ、五カ月間、世界を回遊したその先々での出来事とともに、どくとるマンボウが感じたことなどがユーモアを交えて綴られているものだ。独特のとぼけたユーモアは、時にはクスリとなることもあるけど、それ以上に、文章の素晴らしさは凡百の作家ではないことを十分に感じさせられる。
2023/07/01
おとん707
中学生の時に読んで以来の再読。実はこの本は中学生だった私のその後の進路に多大の影響を与えた。まだ海外旅行が一部の人のものだった時代に読んだこの本は私の海外への憧れに火を点け、結局大人になって海外で働く職業につく動機になった。いまその頃のことを思い出しながら読み返してみると面白おかしく描かれている中にも筆者が初めて接した外国への驚きと好奇心が素直に読み取れる。尤も港に着けば怪しい歓楽街を彷徨う冒険譚を当時中学生の私がどう読んだかは全く記憶にない。うぶだった私は読み飛ばしたのだろう。その辺は今だから味わえる。
2023/07/26
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