ミステリーの系譜 (中公文庫 A 9-11)
ミステリーの系譜 (中公文庫 A 9-11) / 感想・レビュー
こばまり
日本史は司馬フィルター、事件は清張フィルターを通したものを即ち事実と受け止めてしまう私である。津山三十人殺しに迫る『闇に駆ける猟銃』冒頭に「最近出版されたカポーティの『冷血』〜」との記述があり興奮する。
2019/08/27
GAKU
先日『津山三十人殺し』を読んでいる時に、読友さんに薦められ読んでみました。あの松本清張氏が書いたノンフィクション。『津山三十人殺し』を題材にした「闇に駆ける猟銃」を始め、継子を殺して食べてしまった「肉鍋を食う女」、大正時代の冤罪「二人の真犯人」の三篇が収録されています。100ページ程の「闇に〜」で、『津山三十人殺し事件』の概要をかなり凝縮して知ることが出来ます。改めて犯人の殺戮に対する執念の凄まじさを実感しました。⇒
2019/11/26
『よ♪』
ノンフィクション三篇。『闇に駆ける猟銃』──津山事件。昭和13年(1938年)に岡山の山村で30人余りを猟銃で惨殺。古い習。肺病への偏見。被害者意識は加害者や周囲が考えるより遥かに深刻。『肉鍋を食う女』──群馬人肉鍋事件。昭和20年(1945年)。貧しい山村で娘が行方不明に。家族は皆やや知的障害があったと見られる。貧困格差と戦時中の飢餓。全否定は出来ない。『二人の真犯人』──鈴ヶ森おハル殺し。大正4年(1915年)に起きた冤罪事件。別の二人が同時に起訴され異例の裁判。自白強要や証拠の捏造。歪んでいる──。
2020/08/08
yumiko
「八つ墓村」の原案にもなった津山三十人殺しを辿る「闇に駆ける猟銃」、不仲な継子を鍋にしてしまった女とその類似事件に言及した「肉鍋を食う女」、冤罪事件の恐怖を描いた「二人の真犯人」が収められた松本清張のルポルタージュ。淡々と積み重ねられる事実の恐ろしさ。余計なものの入り込まない圧倒的な重みには、おそらく小説も映画も敵わない。昭和初期の寒村の因習や貧しさ、社会的弱者への冷淡さが、多分に事件に影響を与えていて、その事実にも心肝寒からしむる思いがした。
2015/07/15
cao-rin
この本と「津山三十人殺し」を同時にAmazonで購入、迷って悩んでこちらから先に手をつける。元々興味があった津山事件。著者の淡々とした文体が尚更気味悪さを増幅させる。閉鎖的で貧しい農村。現在では想像も出来ない程の息苦しさがあった事だろう。そして夜這いという風習は確かに聞いていたが、村民達の貞操観念の低さには驚かされる。男女や既婚未婚問わず見境がない。更には戦争が犯人、都井睦雄の凶行に影響しているという著者の考えは大いに納得がいく。今年は昭和犯罪史に関連する本をもっと読みたいと思う。
2020/01/15
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