ミンドロ島ふたたび (中公文庫 A 33-6)
ミンドロ島ふたたび (中公文庫 A 33-6) / 感想・レビュー
モリータ
◆表題作は1967年の著者ミンドロ島再訪記。初出は1969年。「比島に着いた補充兵」「忘れ得ぬ人々」「ユー・アー・ヘヴィー」「改訂 西矢隊始末記」も収録。◆移転したブックス・カルボで拾う。◆諸篇で描かれてきた戦中の行動の確認と、再訪当時のもようが交互に描かれるとともに、『レイテ戦記』のような巨視的な戦場の動きが織り交ぜられていて、これまでの文章とはややリズムが異なる印象(しかし対談でその動機は承知)。さらに、他の文章では読んだことのない、死んだ兵士たちへの率直な独白部分が白眉(以下、コメ欄で抜き書き)。
2019/09/09
櫻井愛
戦後20年ほどを経て、かつての赴任地フィリピンのミンドロ島に渡った大岡昇平の体験がもとになっている。補充兵としての記憶と小説家として見るフィリピンのいまが交互に重なり、戦後の文献などからわかった知識も加わって詳細に、より鮮明に描かれていく。かつての僚友たちに語りかける言葉がせつない。
2024/07/29
からし
「あれから十三年經つた今日でも、棧橋で泣いてゐた女達がゐたことを報告します。 とつくに骨になつてしまつたみんなのことを、まだ思つてゐる人間が、ゐるんですぞ。 」 フィリピンでは慰霊にやってくる日本人に、いわゆる「日本兵ビジネス」が盛んに持ちかけられるそうだ 水筒や鉄兜なら単なる落し物で、旧持ち主はラッキーにも捕虜になるか 終戦まで生き延びて帰国できた可能性があるけど、 認識票を持ってこられると「ツラい」と書いてあった。 認識票が本人の手から離れる=100%持ち主は死んでいるから・・・
2014/10/24
Shinya Shigaki
戦中日本兵としてミンドロ島に赴任したが、その後捕虜となり強制送還となった作家大岡正平の著作で、1967年に戦跡慰問団としてミンドロ島に再び訪れた際の紀行文。 一日本兵から見たミンドロ島を知る貴重な本です。 ちなみに、大岡氏の『野火』という小説があるが、これは戦中、ミンドロ島の山の中を逃げながら徐々に食糧が無くなっていく中で遂には人肉を食うか食わないかの極限状態に陥った日本兵の話。こちらもミンドロ島と日本人の歴史のある側面を知る上で興味深い作品です。
2013/05/16
寛理
いろいろ語りたいことはあるが、「ユー・アー・ヘヴィ」について。俘虜として捕まったばかりの男の異常なほど大胆な行動がいっしゅ不気味なユーモアを帯びて描かれる。ゲンコツ一発食らわせたみたいな文章があまりにも衝撃的。大岡昇平の中でも屈指の問題作であろう
2020/07/25
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