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人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫 た 30-11)

人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫 た 30-11)

人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫 た 30-11)

作家
谷崎潤一郎
出版社
中央公論新社
発売日
1978-03-10
ISBN
9784122005198
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人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫 た 30-11) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

『源氏物語』の現代語訳や『細雪』などから、谷崎といえば一般に日本古典への回帰と和風のイメージが強い。しかし、ここでの谷崎は別人の如く違った風貌を見せている。すなわち、モダニストの谷崎である。しかも、大正期のロマネスクを身に纏いつつ。本書は19世紀末にパリで刊行されたワイルドの『サロメ』が強く意識されているようだ。表紙と挿絵は水島爾保布のものだが、これも明らかにビアズリーだ。「人魚の嘆き」は、谷崎の描く物語も、また水島の絵にも陶酔的なシノワズリーが加味されている。一方の「魔術師」は究極のマゾヒズム小説。

2012/12/18

新地学@児童書病発動中

谷崎潤一郎初期の2短編を美しい挿画と共に収録。人魚や魔術師が登場することから分かるように2つの短編は文学いうより、大人のための童話という趣がある。華麗で色彩豊かな文章は読んでいると、陶然とした気持ちになった。特に『魔術師』の方の不思議な公園の描写は見事なもので、小説だけに可能な白昼夢の世界へ連れて行ってくれる。夢のような世界を描きながら、現実の世界に対する諦観のようなものが感じられるのが面白かったし、物語全体を引き締めていると感じた。

2014/08/04

tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。

今私はカフェで珈琲を飲んでいる。 そこに年の頃で二十歳位の女性がひとり、ひとつ向かいの席に座った。 シナモンティの注文を告げると文庫本を取り出し 憂いを帯びた眼差しで文字を追い、老獪なマジシャンの如き 指捌きで頁を捲る。 気になる。いったい何を読んでいるのだろう? 私の心を透かしたかの様にブックカバーは付けていない。 覗けたタイトルは『人魚の嘆き・魔術師』。 子憎たらしい程、嗚呼それは、まさに彼女其の者のことではないか。 ☆5.0

2021/01/20

(C17H26O4)

『魔術師』参加型アトラクションとして何処かのパークの一角に忽然と現れたら、と想像した。キャストに案内されて進むと妖しげな楼閣やイルミネエションの光芒が。歪んでせり出す装飾も目に浮かぶ。「小屋」で魔術師が妖術を使い芝居ががったように言う。「是非とも満場の紳士淑女が、自ら奮って私の魔術にかかって頂くことを望みます」「どうですか皆さん、…誰方か犠牲者になる方はありませんか」魔術師の魅力に惑わせれて堪らずあなたも手を挙げる。「どうぞ私の望みをかなえて、お前の奴隷に使ってくれ」半羊神にされたその先は誰も知らない。

2020/04/27

★Masako★

★★★+「ひとり人魚祭り」第三弾は、久しぶりに文豪の作品。『人魚の嘆き』中国・清王朝の時代、才色兼備で莫大な富もあるうら若き貴公子が、西洋から連れ去られてきた美しい人魚を買い虜となるが…『魔術師』ある町のある公園にある見世物小屋に美しい魔術師がいると聞いて、恋人たちが魔術師のショーを観に行くのだがそこで…。どちらも妖しげで幻想的な作品。どんな結末が待っていようと美を求め美に溺れていく主人公たち。古風で流麗な文体・表現に、水島爾保布の挿し絵がとてもマッチしている。谷崎氏の耽美な世界にどっぷり浸れた♪

2018/03/31

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