ザルツブルクの小枝: アメリカ・ヨーロッパ紀行 (中公文庫 お 2-7)
ザルツブルクの小枝: アメリカ・ヨーロッパ紀行 (中公文庫 お 2-7) / 感想・レビュー
寛理
レポートのために再読したが、「鎮魂歌」がすばらしいなと。レポートは、大岡への折口信夫の鎮魂説の影響を論じたのだが、大岡の「鎮魂」は永久に失敗するものなのだ。だが、鎮魂の不可能性を言い立てることに意味はない。鎮魂の完了のために書き続けることこそが現在を生きることである。私にとっての大岡昇平は、結論を出さないためには、結論を出そうと試み続けなければならない、という人生で最も大切な真理を教えてくれた偉大な作家である。
2020/08/03
寛理
☆☆☆☆ 40歳頃の大岡の紀行文集。結構いいかげんなことも言っているが、率直でいい。ポーやロレンスについて書いたところと、ヴァレリーの詩のところが面白い。おしまいのあたりに、ロンドンでジャックザリッパーの映画を3回続けて観た、とさらっと書いてあってゾクっとした。 『萌野』を読んで、これも読もうと思ったのだが、大岡という人は、いかにも凡庸でマッチョなことを言いながらもなぜか作品はすばらしいという不思議な小説家である。
2019/02/15
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