反劇的人間 (中公文庫 M 89)
反劇的人間 (中公文庫 M 89) / 感想・レビュー
瓜坊
能動的に世界を受け入れる、って言い方だと矛盾してるようだけれど、この本の安部公房はそういう姿勢を見せているような気がする。例えば感情を無理に動かそうとするオペラは好まずに、『ゴドーを待ちながら』を好むところ。また概念的な特殊と即物的な具体を区別して、後者から普遍を求めるところ。こちらから世界を積極的に捉えにいって、しかし簡単なイデオロギーで捉えたものを決着させず、少し斜に構えつつも否定して切り捨てる事をしない。むき出しの時間を感じたいんでしょうかね。共感できる気もする。
2017/10/11
galoisbaobab
若かりし安部公房とドナルド・キーンの対談!荒削りだけど面白い対談です。日本的なものとは?というテーマからスタートして文学と演劇を考察しながら現代を思考する、という感じ。オチない議論ですがボクは嫌いじゃありません。10から20代の頃って安部公房の小説ってかなり好きだったけど、この本読んで安部公房とは友達にはなれないなーとw。めんどくさすぎる。
2017/12/14
人工知能
安部公房と日本文学者キーンの対談。「たとえばガラスのコップがキラッと光ったって、よく大衆作家は書きますね。しかし、コップは決して二回おなじ光り方はしない。必ずそのときの光り方、一回だけの表現があるわけですよ。それを一生懸命になって探す。」川端と谷崎とどちらがよりヨーロッパ的な文学か、なども語り合っていて、おもしろく読んだ。
2015/05/11
静かな生活
伝統VS反伝統。自分はサブカルチャーで育った人間なので安部公房の言いたいことがわかる。現代日本がネガティブに語られまくる時代にあって振り返りたい意見の数々。
2021/09/16
まつ
キーンさんの訃報をニュースでみて、読んでみた。それまでに、私はドナルド・キーンの著作を読んだことはなかった。まず、第一に二人の知識の幅に驚いた。キーンさんの経歴も知らないのだが、日本の能や歌舞伎のことも知っている。川端康成と谷崎潤一郎のどちらが日本的かという議論も出てくる。ヨーロッパのオペラのことにも詳しい。その博識に堂々と持論を述べて渡り合っていく安部公房もまた凄い。小説の主人公に名前をつけることは重要かという議論も面白かった。ベケットの『ゴドーを待ちながら』が賞賛されていた。
2019/03/03
感想・レビューをもっと見る