今年の秋 (中公文庫 A 139)
今年の秋 (中公文庫 A 139) / 感想・レビュー
フリウリ
冒頭からの「今年の春」(昭和9年)、「今年の初夏」(昭和18年)、「今年の秋」(昭和34年)は、それぞれ父、母、弟の死が間近となり、瀬戸内の故郷に帰るお話です。淡々とした文章ですが、長く文章を書いてきたからこそ、このテーマが生きてくるわけで、素晴らしいと思いました。最後の「文学生活の六十年」(昭和37年)は談話の文字起こしのようですが、正宗白鳥の人となりがよく出ているように思われます。7
2024/03/29
champclair´69
#読了 白鳥の最晩年に弟の死に際して書かれた作品で、小説というより随筆である。自らも人生の終末が近いからなのか、死に行く肉親を特に悲しむ風でもなく、淡々と心に浮かんでくる思いや葬式までの出来事を綴っている。弟を見舞うことはしているものの、釣りに行ったり京阪地方で遊んで帰ったりしており、帰宅後弟の死の知らせを毎日心待ちにしていた、という表現すらある。 そのような超然とした態度でありつつ、自分の死に様や魂の行き場所は何処なのか、といった不安を白鳥はやはり持っていたのではないだろうか。
2022/11/28
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