チャリング・クロス街84番地: 書物を愛する人のための本 (中公文庫 M 252)
チャリング・クロス街84番地: 書物を愛する人のための本 (中公文庫 M 252) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
雑誌でオススメにて紹介されていた作品でしたが、グイグイひきこまれ、サラサラとイッキ読みでした。とある古書好きな女性「へレーン」と古書店との手紙でのやりとりが始まり、そのやりとり(本の注文、紹介など)が20年にもわたり、続けられている書簡での一冊です。本好き(特に海外作品)な方にはたまらない一冊となるのは間違いなしで、海外作品にあまり関心がない方でも、手紙のやりとりを十分に楽しむコトができるステキな一冊です。本作を読み、改めて『手紙』っていいなと思いました。メールも便利ですが、やっぱり手紙も捨てがたいです。
2020/08/15
まーくん
NY在住の米国女性とロンドン古書店との大西洋を越えた20年に亘る往復書簡。戦後間もない1949年、女性からの古書探し依頼の手紙で始まる。何とも奔放な、毒舌ながらも心のこもった手紙。かたや古書店男性のいかにも英国紳士然としていながら、おおらかで誠実な対応。戦後の苦しい食糧事情の頃からケネディやビートルズの名が出る頃まで、本を愛する者同士のやり取りが続く。英米文学に疎く、交わされる書物についての知識は持ち合わせていないのが全く残念だが、江藤淳氏の格調高い素晴らしい訳文により、その雰囲気が実によく伝わってくる。
2020/01/12
buchipanda3
作家のアメリカ人女性と古書店員のイギリス人男性による大西洋を挟んだ往復書簡。副題に"書物を愛する人のための本"とあるように、二人の書物への愛着、そして英国文学愛に満ちた手紙の文章は読んでいて楽しく、そして才知溢れるやり取りを羨ましく感じた。男性の方は英国紳士らしく端然とした文章ながらも和らいだ雰囲気を醸し出す。一方で女性の方は率直な物言いだけれども親しみを感じさせる。そのお国柄の対比もまた面白い。古き良き味わい。読後は、気持ちの余裕を感じさせる大人な会話、そして本の楽しみ方というものを改めて思い巡らせた。
2020/07/29
ジュール リブレ
最近、新装増補版が平積みされていて図書館予約。新刊かと思っていたら1984年の赤茶けた文庫本が差し出されました。お話はそれよりも前の1949年、戦後まだ厳しき頃のロンドンとブルックリンの間の1通の手紙から。1ドルの強さとか、英米の当時の豊かさの違いとか、配給制で卵も乾燥卵しかなかったとか。日本の戦後も厳しかったけど、ロンドンも大変だったんだなとか。その後、20年余に亘る文通の中で育まれた信頼感。一度も会ったことのない大西洋対岸の人との交流。そして、歳月。人生、なかなか捨てたもんじゃない。
2021/06/15
ユメ
ニューヨークに住む女性がロンドン、チャリング・クロス街84番地の古書店に本を注文する手紙を送ったのを機に始まった文通。ヘレーンとフランク、二人の交流は店員と顧客という枠を超えてゆき、他の店員やその家族へもじんわり広がってゆく。その奇妙な絆の萌芽が往復書簡から伝わってきて微笑ましい。もし“私が”ヘレーンだったら、と夢想しただけで小躍りしたくなる。それほど、この愛情を込めた本の受け渡しは魅力的だ。彼女が取り寄せた本のタイトルを片っ端から書き留め、そのリストが長くなっていくのを眺めるたびに幸せを感じた。→
2015/04/23
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