シネ・シティー鳥瞰図 (中公文庫 A 210)
シネ・シティー鳥瞰図 (中公文庫 A 210) / 感想・レビュー
踊る猫
紹介者・批評家としての池澤夏樹の最良の部分が良く出ているように思われる。詩をバックボーンにしているだけあって文章には詩情か含まれ、明晰で読みやすい。素材となるのはテオ・アンゲロプロス『旅芸人の記録』を始めとするギリシャ映画であり、ベルトルッチやヒッチコックから『地獄の黙示録』まで当時の話題作だが権威の威を借りたところはなく、徒手空拳で映画と組み合う真面目さに好感を抱く。それ故の限界もあるが、侮れない強度を備えたものであり私も『暗殺の森』を見直す必要を感じた。侮れない知性を感じる反面、ぬるさも否定は出来ない
2019/12/14
hibimoriSitaro
再読。1988年4月初版の1996年7月再版。池澤夏樹は最初に何を読んだか憶えてないんだが――著作一覧を見るに『ジョン・レノン ラスト・インタビュー』かもしれない――おれの書きたい文体がずばりんこんと綴られていて大いに魂消たものだった。理想的だ。ジツに気持ちよく読め,内容うんぬんを措いても文体だけで読める。それで作家買いをしていて,映画に疎いのに本書も買った。案の定ちゃんと観た映画が一本もない。はあーそうなんやと呟きつつ読みすすめ,最後の章でビートルズ(ジョン)が出てきてそこはたいへんおもしろかった。
2023/08/31
魔魔男爵
名文引用:「女への感謝。女を利用し、無視することによって男らしさを強調するのではなく、女に負っているものをひとつずつ数えなおす素直さ」:池澤自身はカート・ヴォネガットの「私の本心がどこにあろうと、私に必要なのは無批判の愛だった」を引用してますが、この本は映画評論の本である。映画にも名セリフはいっぱいあるだろうに、ヴォネガットの小説から引用してしまうのが、さすが池澤。池澤は映画を年百本以上観る奴は、人生を無駄遣いしてると思っているみたいである。全く同感である。そんな池澤が一番好きな映画は『旅芸人の記録』だ!
2017/02/23
bfish
1988年刊行の映画、オペラ、文楽などの批評集。客観性を持って書かれているが、解説にあるとおり文章が上手い人は何を書いてもソツがなく「読物」として面白い。「マンハッタン」は高校時代に憧れていた作品だったので懐かしく、「旅芸人の記録」は池澤さんの深い思い入れがあるようで繰り返し述べられている。その舞台となっているギリシャの過去から当時に渡る内情が書かれているが、現在の混乱をきたしている政情をみるとギリシャと言う国について改めて考えさせられる。
2015/09/02
丰
Y-20
2008/05/21
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