潤一郎訳 源氏物語 (巻3) (中公文庫)
潤一郎訳 源氏物語 (巻3) (中公文庫) / 感想・レビュー
syota
「蛍」から「若菜下」までを収録。通説によれば「藤裏葉」までが第一部、「若菜上」からは第二部となる。なんといっても「若菜」上下が質・量ともに圧巻だ。柏木が女三の宮の姿を見てしまう場面のリアリティと、その後の柏木の心理描写は舌を巻くほど鮮やかで、凄みさえ漂う。二人の不義を知ってからの光君の鬱屈した想いが、トゲを忍ばせた会話からにじみ出てくるところなども、読み応え十分だ。一方、邦楽への深い造詣を伺わせる女楽の描写など典雅な王朝絵巻もふんだんに織り込まれ、長い巻を一気に読ませてくれる。内容が格段に深みを増した。
2020/06/09
かごむし
平安時代の貴族社会に長い間住んでいるような錯覚がある。もはや、読書の域を越えて、光源氏の人生を、その周辺の人々の人生を、追体験している錯覚がある。読んでいるときは自分の感情があふれ出るほどの圧倒的な印象があったはずなのに、感動がうまく言葉にならない。源氏物語が言葉という記号を通じて、人間そのもののイメージを僕の中で直接動かしてしまっているからだろうか。1巻から、長い時間がかかったがここまで読むことができた。ここまで読んでよかった。この本に出会えてよかった。日本人に生まれてよかった。大げさではなくそう思う。
2015/09/11
こうすけ
谷崎源氏3巻。ますます面白くなっている、すごい。何といっても若菜の巻が最高。ここへ来ての女三宮の登場、紫の上の大病、その裏で進む略奪愛。若い頃の因果応報を感じつつも、静かにキレる源氏がこわい。あんたも大概だったじゃないか。まさかのあの人も再登場してうれしい。今まで出てきたキャラクターたちが、作者によってすごく大切にされているのが良い。猫が重要な役割で出てきて、1000年前から文学と猫の相性が良いことを知る(谷崎の猫の小説はここから発想したのかも)。これまで読んできた人たちへのご褒美のような巻。さて次は。
2022/12/22
いろは
私は元から、文豪なら谷崎潤一郎のファンであることから、谷崎源氏を手に取ったのであるが、大好きな谷崎潤一郎訳でも、源氏物語はやっぱり難しい。ようやく私の目と脳が文体に慣れてきて、紫式部と谷崎潤一郎の美しい文体と、その豊かな表現力に魅了されるばかりだ。源氏物語では、よく、鬱々としているとか、物思いに沈むなどの、いわゆる気を病んでいる表現が多いが、かの有名な文豪である太宰治の人間性と作品も気を病んでいるというように、病みの美学というものがあるのだろうか。病みの表現が許され、愛されるのは、誰もが持つ感情だからか。
2019/03/02
Tai
40代後半に差し掛かり数十年かけて築き上げた光源氏を取り巻く人間関係が光源氏の作品のような集大成のような。これから綻びを見せ始めて、様子が変わって行く。
2024/04/16
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