潤一郎訳源氏物語 (巻5) (中公文庫 た 30-23)
潤一郎訳源氏物語 (巻5) (中公文庫 た 30-23) / 感想・レビュー
syota
平安の雅に浸った日々が終わってしまった。全巻通読したのは高校生の時以来だが、感慨は今回のほうがはるかに深い。序文に「みだりに意訳を試みて平安朝の気分を壊すことをしなかった」とあるとおり、文学的でありながら原文を彷彿とさせる得難い訳だと思う。▲ただ、終わり方はあっけなかった。第一部の結び「藤裏葉」も第二部の結び「幻」も、これでストーリーが完結する、という印象を強く感じさせてくれたのだが、「夢浮橋」にはそういう締めくくりの雰囲気が感じられない。紫式部は本当にここで、この大長編にピリオドを打ったのだろうか。⇒
2020/06/30
かごむし
4巻の途中からは物語の雰囲気が変わってきたので、読後感と言っても一筋縄ではいかないのだけれども、繊細で雄大な人間模様を織り込んだこの長大な物語を読み終わったことに感動している。半年かけて作品を読み終わったが、寂寥感のようなものはまだない。物語の中の人も、社会も、血肉となって自分の体の中に溶け込んでしまったからだろうか。ぜひ10年後、もう一度、源氏物語を読みたいと思う。その時の感想は、より深い共感だろうか、反発だろうか。こんな素晴らしい物語が、日本にあったことを誇りに思う。最高の作品、最高の訳、ありがとう。
2015/11/27
いろは
『寄生』にて、「…故院(光源氏のこと)がおかくれになりましてから後、晩年に世をお逃れになって二三年の間隱栖していらっしゃいました嵯峨の尹だの、…」という文章があるがある。これは、光源氏が晩年に出家をして嵯峨に隱栖していたことがここで初めて分かるのだが、光源氏のような人間が、何故、出家せねばならなかったのだろう。いわゆる俗世間に嫌悪して出家すると思うのだが、光源氏が出家しようと思った理由はなんだろうと、不思議で仕方ない。たぶん、女性関係が嫌になったのであろうと空想するが、光源氏自身に一体何があったのだろう。
2019/03/06
こうすけ
谷崎源氏最終巻。政治ドラマのスリルもあった光源氏の物語から、完全なメロドラマとなった薫たちの物語は、だからこそすいすい読めてこれはこれで面白かった。こんなにキャラクターの心理を細かく描くのはすごい。まさかの浮舟の登場と、その後の展開は韓流ドラマのようで先が気になって止まらず。思えば2巻からは一気読みで、源氏物語や平安時代にまつわる美術展などを見に行くようになったり。受験勉強でチラッと触れるだけではもったいない、驚くほど深く、豊かな世界に出会えました。
2023/01/24
Tai
宇治十帖には唯一無二の輝きを放つ光源氏はもういない。次世代の薫と匂宮はそれぞれ魅力を持ちながらそこまで圧倒的ではなく、恋も成就しない。大ヒット映画に後から続編が作られた感じがするけど周りの期待に応えたのなら、紫式部のサービス精神なのだろうか。帝をも一人の人間として捉えて崇め奉らない創作の自由さは力強い。同時に帝の立場の危うさや当時の力関係を感じる。愛、嫉妬、恩讐、不条理など千年経っても色褪せない。やっと読み終わった。2年かけてしまった。
2024/11/04
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