スティル・ライフ (中公文庫 い 3-3)
スティル・ライフ (中公文庫 い 3-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
1987年下半期芥川賞受賞作。これまでに読んだ芥川賞作品の中では傑出した人気作。登録総数1408、私のお気に入りからのご推薦も21人。これは、おそらくはこの小説そのものと同時に池澤夏樹の人気が高いということなのだろう。宮沢賢治を思わせる結晶質の透明感ある作風が読者の心を震わせる。とりわけ雪のシーン。「雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ」といったくだりは、まさにこの小説ならではの時空感覚を味わうことになる。小説の本質はプロットにはないと改めて思う。
2013/10/27
遥かなる想い
第98回(1987年)芥川賞。 佐々井とぼくの交流を軸に 物語は進む。 この佐々井という男の捉えどころの無さがいい。佐々井と僕の距離感が適正で、 文体も爽やかで 気持ち良い。 謎めいた過去の事実から 始まる二人の 冒険が さらっと描かれている、そんな作品だった。
2017/12/01
風眠
何度も読み返している大好きな本。今回も『スティル・ライフ』の冒頭の文章に、心臓をすいって持っていかれた。『ヤー・チャイカ』の恐竜を飼育する挿入文は、夢見るように美しくて、ジャック・ティボーが奏でるヴァイオリンの音をいつも思い出す。この本はストーリーがどうとか、オチがどうとか言うよりも、長い長い散文詩のような雰囲気を楽しむ感じがいいなと思う。もしも叶うなら、砂漠の真ん中、怖いくらいの星空の下、ランタンを灯して風の声を聴きながら読んでみたい。
2012/07/18
Gotoran
不思議な読後感に誘われた。「スティル・ライフ」>>強烈な印象はなく、冷たさでもなく、じんわりとした静けさ、それはチェレンコフ光の青白さそのもの、宇宙と自然。文中に散りばめられた天文学的な会話、雪という気象現象、神社の境内でのハトの動作からの連想描写に酔いしれた。読了後冒頭に戻ると、初めは読み過ごした冒頭の2ページの意味深の哲学的な表現に、著者の思いが集約されていることに気づかされた。「ヤー・チャイカ」>>”恐龍を飼う少女”の挿話が、読み手の脳に空白を与える。知ろうとするまた読みたくなる不思議だ。
2011/11/23
ミカママ
敬愛する池澤夏樹さまの原点の再読。・・・とはいえ、彼の著作を読むのは2年ぶり?くらいだったので、なんだか読みながら「村上春樹さま」に似てる感、ぬぐえなかった。奇しくも、お名前も春樹と夏樹だしw 「スティル」の佐々井と「ぼく」のやり取りとか、ウイスキーだとか、なんかあの当時の時代なんでしょうか、春樹さま作品の「ぼく」とどうしてもかぶってしまう。あと、作品全体に流れる清潔感と静謐感。まぁ、こまけーことはいいわ。どちらの作家さんもとても好き。
2015/02/08
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