昭和幻燈館 (中公文庫 く 11-1)
昭和幻燈館 (中公文庫 く 11-1) / 感想・レビュー
エドワード
久世さんは陰影礼讃の人である。短調を好み、単色画を好む。古き日本語を愛する。総じてわかり易いことが優先される平成の世から眺める昭和幻燈館。それは難解なものにも意味があり、美しく儚く、暗く湿った時代だった。少年時代に久世さんのドラマを見て育った私が、彼の愛する陰影に心惹かれるのも齢五十のなせる業か。歌舞伎と宝塚の魅力衰えず、西条八十、向田邦子、なかにし礼の言の葉は今なお精彩を放ち、横溝正史へのオマージュは後を絶たない。弥生美術館も三四郎池も煉瓦塀も健在。同潤会なき今、京都の堀川団地に面影が偲ばれますよ。
2014/11/12
ジョバンニ
久世さんの昭和語りは独特の色気があって癖になる。作中、「意地になって辞書を引きながら文字と格闘する本の読み方の魅力にとり憑かれた」とあるけれど、そんな久世さんの作品を読んでいる時は、私もそういった読み方をしているなあと思った。
2015/03/30
ひよピパパ
久世のボキャブラリー、表現力、そして知識がすごい。小さい頃からの半端ない読書量の賜物か。全体的に緊張感のある文体で、それがまた読んでいて心地よかった。文中に出てきた「人は死んではじめてその座標が、定まる」といった言葉には、読みながら思わずうなってしまった。
2015/05/15
みち
今ではもう語られることのないような、耽美への憧憬を語った本。今、といってもこの書の初版はもう20年近く前なのだが。少年期に抱き、失ったものへの憧れはこんなにも大きいのかと思う。ただ、経験したことなんてない私にも、憧れを抱かせるのはなぜだろう。
2015/03/13
いえろう
怪しい世界に引き込まれてしまうのは何故だろうか。人さらい、異人さん、赤い靴、狂女…触れてはいけないものだけど触れずにはいられない、そんな話の数々があった。
2014/10/27
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