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美神の館 (中公文庫 ヒ 4-1)

美神の館 (中公文庫 ヒ 4-1)

美神の館 (中公文庫 ヒ 4-1)

作家
オーブリ・ビアズレー
澁澤龍彦
出版社
中央公論新社
発売日
1993-01-01
ISBN
9784122019706
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美神の館 (中公文庫 ヒ 4-1) / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

ワイルドの『サロメ』の挿画で有名な画家ビアズレーの小説。騎士タンホイザーのウェヌスの丘での幻想的な体験を描く小説。プロットは緊密さに欠けているし、登場人物達には深みがない。それでも、楽しく読めた。ビアズレーが繰り出す画家らしい華麗なイメージには酔えるし、ぬけぬけとしたユーモアに満ち満ちいて、読みながら何度か吹きだしてしまった。とてもまともな文学とは言えないと思うが、ビアズレーの稚気を受け入れることができたら、読む価値はあると思う。小説よりはビアズレーの作品が素晴らしく、こちらはじっくりと眺めた。

2016/11/11

(C17H26O4)

ビアズレーの唯一の小説、というがこれを小説というのかどうか。読んでいると目の前に絵画が現れる。それを眺めていると描かれている人物が景色が動き出す。まるで間近で舞台のひと場を観ているよう。妖しく淫靡で頽廃的なひと場を。澁澤龍彦訳。

2019/11/16

ヴェネツィア

残念ながら未完だが、ビアズレー唯一の小説。タンホイザーとウェヌスの物語だが、ワーグナーの『タンホイザー』に置き換えると、全3幕の内せいぜいが第1幕までといったところ。ビアズレーの文体は、細密画をどこまでも拡張していったかのよう。彼の絵はモノクロだが、小説の文章では色鮮やかな色彩の乱舞といった観を呈している。澁澤訳ということもあり、サド(ただしグッと穏やかで繊細な)を思わせなくもない。また、巻末にはビアズレーの画集も併録されており、造本の紙質も高級紙を使用しているなど出版社側の気配りもなされている。

2013/07/03

いたろう

原田マハさんが書いたビアズレーの伝記小説「サロメ」を読み、そう言えば、ビアズレーが書いた「小説」があったなと本棚の奥から探しだして再読。澁澤龍彦訳のこの文庫本を購入したのは1993年。「今月の新刊 世紀末の鬼才が遺した唯一の小説」と書かれた帯がついている。調べたら、この本は、今では絶版になっているよう。内容は、ビアズレーの絵の世界をそのまま描写したような妖しい世界。騎士タンホイザーと女神にして娼婦のウェヌス(ヴィーナス)、その取り巻きたちの狂態、性の倒錯。巻末にビアズレーの画集がついているのがうれしい。

2017/06/13

らぱん

画家であるピアズレーの唯一の小説で120頁の中に、同性愛、フェティシズム、獣姦、コプロフィリアなど性的倒錯がぎゅっと詰め込まれた盛りだくさんのポルノグラフィだ。未完なのだが、全体がオナニズムのような世界なのであまり気にならない。その世界は知恵の実を食べる以前の楽園<エデン>であり、煌びやかで華やかな様子が過剰に装飾された文体で描かれる。悪のない世界の官能は奔放であり淫靡さはない。どこまでも無邪気に性愛を愉しむ閉じられた世界だ。非常に絵画的であり、突き抜け方が異色であり、ちょっと他にはないものだと思う。↓

2019/12/07

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