お艶殺し (中公文庫 た 30-25)
お艶殺し (中公文庫 た 30-25) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
女に理想しか見ない貴方の括弧付きの『愛』を、最初は嬉しく思った日々もありました。段々とそれが重苦しく次第に煩わしく思うようにさえなった時点で、きっと私は貴方から離れるべきだったのでしょう。私が聖女であったなら。でもそんなに優しくもなく打算的な私に『惚れた』(こちらも括弧付きなのがミソ)のが運の尽き。思う存分利用し尽くして差しあげましょう。私のかいなの代わりにまめまめしく働く貴方のこと私も『愛して』差しあげます。逆恨みはやめて。私はもう次のstageにいるの。死にたいと言うなら勝手に独りで死んでちょうだい。
2020/12/29
ケイ
『台所太平記』が面白く、もう1冊と手に取る『お艶殺し』。『髪結新三』的展開になるのか、近松門左衛門的な情念があふれるのかと期待するも、どうもズンと響いてこない。圓朝のような落語での語りや、歌舞伎の演者の表情が入ったものと比べてしまうのはフェアじゃないだろうが、だらしなさばかりを受け取ってしまうのよね。谷崎の場合は、女について感じるイロをどこか笑いにするところがなけりゃ、私には受け取りにくいな。
2023/08/11
優希
いつ殺され、いつ死ぬか。2編とも「死」が見えるからこそ残酷な美しさを放っているのだと思います。
2022/07/11
Shoji
『お艶殺し』と『金色の死』の二篇が収録されています。『お艶殺し』は江戸時代の男と女の痴話ばなしから始まる殺人事件です。まるで文楽の「世話物」の様相です。そう考えると面白かった。『金色の死』は芸術を語っていますが、どうも私には屁理屈にしか聞こえませんでした。それがいい所なんでしょう、きっと。あらびっくり、そんなラストが待っています。どちらも読後感は悪くないです。
2021/04/03
抹茶モナカ
『お艶殺し』は、江戸が舞台の古典落語みたいで、圓朝の作として「圓生百席」に録音されていても不思議じゃないような人間の業についての話。併録の『金色の死』は、岡村という男との芸術を巡るドラマなのだけれど、芸術論が深まり、岡村が暴走し出す辺りから、退屈に感じた。こちらは三島由紀夫が発掘したとのことで、岡村は三島をモデルにしたようにさえ感じた。2作とも、ほぼ同時期の作品らしいけれど、物語性重視の前者と芸術論についての後者とで、毛色は違うながらも、読後、作品について語りたくなる力があるのは共通している。
2018/08/02
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