悪党の裔 上巻 (中公文庫 き 17-2)
悪党の裔 上巻 (中公文庫 き 17-2) / 感想・レビュー
とん大西
赤松円心…我ながら渋いチョイスだなぁ、と。足利尊氏、楠木正成、新田義貞といった倒幕のきらびやかな面々とはひと味違う播磨の一土豪。長い雌伏の時を経てついに決起。迎え撃ち、撹乱する。火のように攻め、恬淡と敗走する。静かに抱き続けた野心を大胆に解放する円心の円熟さよ。冷静沈着にして深慮遠望。孤高の悪党として己をみつめ機敏に果断。あぁ、やっぱりこういう骨太な男が自分の理想像なんだなぁとあらためて思います。敵は崩壊寸前ながらいまだ強固な鎌倉幕府の大軍。悪党として如何に立ち向かうか、円心。いよいよ歴史の分岐点です。
2022/01/14
フミ
「楠木正成」から、久しぶりに北方・南北朝モノを手に取ってみました。鎌倉末~南北朝に活躍した、播磨の悪党(武士として認められてない親方?)の、鎌倉幕府の京都支部「六波羅」に対する、雌伏と蜂起を描く前編です。 やはり、北方先生は「巨大な権力に抗う」構図がワクワクしますね。 播磨の代官の目を誤魔化しながら、隣国の備前、美作の代官を賊に偽装して襲い、盗品を摂津で売る、勇ましい軍費調達をしつつ、帝の使者にも反応せず、なかなか腰を上げない…。読者にも腹の読めない「悪党の親玉」。その戦いの目指す先は~…という感じです。
2023/08/04
はらぺこ
『楠木正成』を読んで好きになった悪党・赤松円心の話。『楠木正成』と同じ作者で同じ出版社やのに所々の設定など違うので違和感がある。少なくとも「則祐」の読みぐらいは統一して欲しかった。とりあえず下巻を読んでみる。
2010/04/12
うまとら(仕事が多忙のため休止中)
南北朝時代の播磨の悪党、赤松円心を描いた作品。影の主役は大塔宮と足利尊氏。読みやすく一気に読めます。赤松家が悪党出身とは知りませんでした。嘉吉の乱で赤松満祐が足利義教を殺害することぐらいしか知らなかったので、名門かと思っていました。赤松円心の人物像が時代を動かしたまでいかないため、主役の存在感が低い。作者の「武王の門」や「導誉なり」など一連の南北朝時代作を読んでいないと、理解が難しいかもしれません。導誉なりを読んだ後に読むと良いと思います。
2010/05/17
buchipanda3
鎌倉末期の悪党・赤松円心を描いた小説。悪党と言っても悪人の意ではなく専制政治へ反抗する者。円心は倒幕の足掛かりとなる六波羅攻めを行った武将。播磨の小勢力に過ぎない彼が機知に富んだ戦術で倒幕に向けて攻め続ける様は痛快そのものだった。円心は楠木正成のように義に篤いわけではなく、足利高氏のように天下への野心があるわけでもなく、悪党としておのが為に、おのが夢のためにという信念を貫く。独りよがりという訳ではない。むしろ謙虚さ、理想を追わず現実的な考え方の持ち主に見えた。上巻は円心が怒涛の勢いで六波羅へ進むところまで
2016/06/05
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