熊を放つ 上巻 改版 (中公文庫 ア 1-3)
熊を放つ 上巻 改版 (中公文庫 ア 1-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
ジョン・アーヴィングの最初の長編小説。訳は村上春樹。上巻が終った段階では、まだ物語全体の構想が十分に明らかではない。少なくても構成はかなり変わっていて、前半がウイーンを起点に、主人公2人によるタンデム・オートバイでの、奔放で傍迷惑でさえあるツーリング。後半はジークフリートの自伝による、両親の若き日―ヒットラー台頭時のオーストリアと、現在時での動物園への侵入記が交互に描かれるというもの。前半からは1969年の映画『イージーライダー』を連想するし(小説は1967年の刊行)どこか共通するものを感じる。
2013/04/22
NAO
再読。ジギーの喪失感と、焦燥感、弱い者に対する過敏なまでの共感は、アーヴィングの作品に共通するものだが、処女作ということもあって、ちょっと堅い感じが否めない。取りとめもなく続く猥雑な話もアーヴィングの特徴ではあるけれど、師であるヴォネガットの影響がかなり濃厚に感じられ、まだ『ホテル・ニューハンプシャー』以降に見られるアーヴィングの独自な世界観は出来上がっていないような気がする。この話の中では、青臭いジギーとグラフのノスタルジックなバイクの旅のシーンが秀逸だと思う。
2016/03/02
Vakira
「おならをする河馬」って?イギリスのオートバイ、ロイヤルエンフィールド700登場。ロードムービーならぬロードノベル。バイク乗りにはたまらない。そして初っ端、突発事故。事故ってリアル事故ではない。バイク好き女子からの逆ナンパ。この感覚 村上春樹の書く文体に似ている。そのはず、翻訳は春さんだった。この作品‘68。春さんの「風の歌を聴け」79年。僕と突然友人となるジギー。指のないウエイター登場。もしやアーヴィングの文体、構成、登場キャラまねした?なんて思ってしまうほど春さん節。地にバイク、僕に女、野生に自由を!
2020/11/19
メタボン
☆☆☆☆ 魅力ある二人の若者ジギーとグラフのオートバイ旅行。その途中、ガレフという女の子の家で逗留中、ジギーがドタバタに巻き込まれ失踪。二人が合流したところで、物語はいったん中断し、ジギーの父の自伝と、動物園から動物たちを放すため偵察する経緯が交互に語られる。自伝はナチスドイツに侵略されていくオーストリアの歴史が背景となっているが、オーストリア鷲に扮する卵屋をめぐるドタバタが面白い。物語がどんな展開を示すのか予想も出来ず、下巻へ。
2020/11/04
田氏
知人と本の話で盛り上がり、オースターやユアグローが好きだと伝えたところ、これを激プッシュされた。下巻まで読み終えてからこれを書いているが、別にオースター的でもユアグロー的でもないよねこれ。ないけど、面白くはある。村上春樹の訳も、おそらくよく合っている。もし『キャッチャー・イン・ザ・ライ』みたいな口調だったらまた真似してやろうと思っていたのに。やれやれ。こういうわけで、感想欄の文字数が余っている。まあいいや。切り上げて下巻に行こう。https://bookmeter.com/reviews/79097921
2019/02/26
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