沖縄文化論: 忘れられた日本 (中公文庫 お 54-1)
沖縄文化論: 忘れられた日本 (中公文庫 お 54-1) / 感想・レビュー
s-kozy
未だ軍政下にあった1959(昭和34)年11〜12月の沖縄で太郎が見たもの、感じたことの報告。太郎はそこに日本では閉され、忘れさられ、現代生活の外に押しやられている、日本の原型のようなものを見い出す。この発見を伝えようとする太郎の熱量が物凄い。七五調の文体、効果的な体言止めとこの本の文章も非常に良い読みやすい。名著と言ってよいのではないでしょうか。
2018/06/07
nobi
沖縄の旅で出会った人々の素朴さ強靭さ、のどかな風景、むごい歴史を描く彼の言葉は、核心を突き歯切れ良く共感にあふれている。その勢いありつつ鋭敏な感性は、神体や偶像のない御嶽(うたき)の一本の木、置かれた石に“神と人間の通いあう清冽な流れ”を見、本来的な生活の肌理が意識下の奥底に生き出すことを体感し、アジア大陸の文化とは異なる太平洋の島嶼文化と捉える。“その感動は芸術家であったら作品の中に、当然あらわれるはずだ”との予言通り10年後のEXPO70では産業発展の誇示に反旗を翻すような作品“太陽の塔”を生み出す。
2024/07/11
ホークス
岡本太郎氏の本を読むには覚悟がいる。対象(本書では沖縄)に正面から取り組み、本質に向かってグイグイ進んでいく。正解を示すのではない。同じ木を彫っても彫刻家ごとの作品になるように、考察も独自の表現だ。著者の考察は、「生きるとは生命を開き切ること」という持論そのままに疾走する。常識も世間も無い。読者を導かず、「お前はどのように感じ、考えるのか」と問う。狭い視野に自縛されがちな人間の悲哀を踏まえて。厳しくて真っ当で痺れる。沖縄から展開する歌や踊りの考察に加え、全てをリセットする日本論、沖縄論が良かった。
2020/12/24
AICHAN
図書館本。著者は「芸術は爆発だ!」の岡本太郎。戦後間もなく、内地で沖縄舞踊を見て胸を打たれた岡本は沖縄文化に興味を持つ。返還前の沖縄を訪 れたのはそのためだった。しかし沖縄には、洗練された文化らしい文化がないと感じた。かつて見た沖縄舞踊は士族のもので、一般民衆の中に優れた文化は見つからなかった。それは貧困のためだったと岡本は悟る。貧しい民衆の中に入っていった岡本は、一般の人々の歌舞や信仰の中に沖縄の文化を見いだす。それは貧しかったかつての日本内地の文化に通ずるものであった。
2018/12/04
Shoji
1959年の沖縄の民俗を丁寧に採取して書かれた本である。 沖縄返還前である。 当時、石垣島は一周するのに3泊4日かかり、舗装道路はほぼなく、子供たちは半裸で生活していたそうだ。 現在では、乗用車で一時間半もあれば一周できてしまう。 著者があとがきで書いている。 「沖縄はあくまで沖縄であるべきなのだ。決していわゆる「本土なみ」などにはなってはいけない。」 3泊4日が一時間半に短縮されて失ったものも多いはずだ。 考えさせられる一冊であった。
2016/04/14
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