富士日記 下巻 改版 (中公文庫 た 15-8)
富士日記 下巻 改版 (中公文庫 た 15-8) / 感想・レビュー
KAZOO
十年ぶりの再読です。この巻では昭和44年から武田泰淳がなくなる昭和51年までのことが綴られています。読み直してもこの百合子さんは本当にすごいと感じます。東京の赤坂と富士桜高原までの道のりをかなり往復していたこと(中央高速道が途中で完成しますが)と物品の価格をかなり細かく記録していたということです。資料的な価値もあるという気がします。また犬の代わりに娘が連れてきた猫がかなり出てきます。
2024/08/16
メタボン
☆☆☆☆ 何てことのない日常の積み重ねが哀しくも愛しい。愛猫タマがいろいろと小動物をくわえて持ってくるのが可笑しい。食事の記述が多いがそのバリエーションの多さに感心してしまう。しかも美味しそう。それにしても、しょっちゅう東京と富士山麓を車で往復する百合子氏のパワーはすごい。後半は弱っていく泰淳の姿が切ない。
2020/08/10
ホークス
最終巻は1969〜76年。生き物の観察に強い引力がある。留守中に屋内で満開となった桜の一枝、湖で大量に死んでいた魚、農協をうろつく大きなネズミなど。人間はより緻密に、金物屋のしっかりした老婆とか工事現場で働く農家の女の態度や仕草まで書く。一貫してクールで自然体。夫は軽い脳血栓を患い、次第に明確に弱っていく。この頃から、猫が殺したモグラや鳥、車に轢かれた犬など、感情を抑えて死を描写するようになる。日記は中断を挟み、夫の臨終近くまで続く。再読なのに読み始めたら止められない。本書から日記が好きになった。
2021/07/19
KAZOO
最後の巻です。何度も読んでいるのですがいつも何か新鮮で得るところがあります。武田泰淳さんが亡くなられるところでも淡々と描かれていて、書き手の心情が余計わかる気がします。あまりこう入れ込んだりしていないところがいいのかもしれません。今度はいつ読みなおそうかなあともう考えています。
2014/02/10
ぐうぐう
読み終えるのが惜しく、なかなか手に取ることのできなかった『富士日記』下巻。これが最後の巻と覚悟しながらページをめくるも、武田百合子は当然のことながら、昭和51年9月で日記が終わることを知る由もなく日々を綴っており、いや、それどころか、この日記が将来刊行され、多くの人の目に晒されることすら知らないので、何か格好をつけるわけではなく、ごくごく自然体で、夫・武田泰淳との富士での生活を、上中巻同様、記していく。百合子が帝銀事件の平沢の描いた絵の話を何度もしてしまい、「ついしゃべっちゃう」と夫に言うと、(つづく)
2020/01/15
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