Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)
Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫) / 感想・レビュー
ムッネニーク
69冊目『Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』(レイモンド・カーヴァー 著、村上春樹 編訳、1997年10月、中央公論新社)村上春樹が偏愛する作家、レイモンド・カーヴァー。彼の短編、エッセイ、詩など12作品(+おまけが1作)が収録。どの作品も硬質な文章でありながら、リリシズムに溢れる繊細な物語が展開されてゆく。「大聖堂」や「僕が電話をかけている場所」といった代表作も収録されており、カーヴァーの入門書として最適な一冊。 〈「だってね、スチュアート、彼女はまだほんの子供だったのよ」〉
2022/11/22
藤月はな(灯れ松明の火)
最初の三篇は既読。「ダンスしてみないか?」はあの時の大切に思った感情が言葉に言い表せない時の戸惑いって分かるな~。「足元に流れる川」はいつでも優しいとは限らないこの世だと思い知らされるニュースでふと、浮かぶ上がる「もし、自分だったら」。そんなクレアの不安はスチュアートに決して理解されない。確かにスチュアートは分かり合おうとしているけど、クレアのタイミングと噛み合わないのだ。それが生み出す断裂が何とも切ない。そして「大聖堂」は確かに傑作だった。目が開いている人が実は何も見ていない事実が痛烈だが、救いもあった
2018/12/15
はたっぴ
大事に積読していた村上さんの訳本。村上さんの小説のベースになっていそうな井戸や食べ物に纏わる描写に親近感を覚え、気楽に読める短編集だった。ただし、ストーリーは明るくない。これはカーヴァーの人生観に基づくものだという。ハッピーエンドの美しい物語ではないのに、究極まで削ぎ落とされた短編のいずれもが独特の世界を持ち、一度読み始めると先が気になり抜け出せなくなった。“生きることを。常に、生きることを。”というカーヴァーの拘り(信条)が随所に感じられる名作の数々。作品ごとの村上さんの前書きコメントも味わい深い。
2016/09/26
masa
祖母が亡くなったとき、小学生だった。着物が普段着の人だったことしか覚えていない。初めての身近な人の死は実感がなくて、お通夜の場で交わされる言葉はどこか台詞じみて演技臭く感じた。涙が出ない。ネットのコメント欄でも時折漂う気がしてしまう芝居臭。未だに僕は不自然じゃないお悔やみを申し上げられない。とにかく、僕は上手に哀しんだり泣いたりできない欠陥人間で、だけど、それでもお腹は空いた。振る舞いの寿司を食べた。味がしない。食べていたら泣けてきた。A Small, Good Thing に救われて、僕らは生きている。
2018/11/20
やきいも
村上春樹がみずから訳したカーヴァーの作品の中から、お気に入りの作品を集めた短編集。私は『大聖堂(カセドラル)』が大好き。「私」の妻の友人の盲人が家に遊びにくる。「私」の手の上に盲人が手をのせて大聖堂の絵を2人で書いていくうちに何ともいえない心の共鳴が生まれるという話。カフカ風にシニカルで突き放したような感じの初期の作品。そして結末に救済の光が用意されている後期の作品。発表時期によって結構作風が異なるのはややとまどう。私はこれからも読み返していくと思う。
2015/03/13
感想・レビューをもっと見る