鬼龍院花子の生涯 (中公文庫 み 18-14)
鬼龍院花子の生涯 (中公文庫 み 18-14) / 感想・レビュー
カピバラ
鬼龍院花子とタイトルにありますが、主人公は、松恵ですね。彼女の波乱万丈な人生を見ると、本当に辛かったです。任侠の世界の光と影を垣間見ました。鬼政に松恵が手篭めにされそうなシーンは本当に見ていて辛かった。最後は幸せな結婚ができたと思いきや、残念なことに。彼女の一生は一体なんだったんだろう。
2014/10/22
姉勤
大正から戦前に土佐に一家を興し没落した、侠客・鬼龍院政五郎と、彼に絡め取られた女たちの因果。鬼龍院花子は政五郎によって半ば拉致された少女が生んだ、一家の跡目を継ぐべき女だったが… 物語は政五郎の養女、松恵の目を通して描かれる。徒手空拳から土佐の親分として、いくらでも横車を押せる政五郎の絶倫さがに陰りを見せるのは、花子が生まれた頃からか。一家や自身にふりかかる不幸に、運命に逆らう気も無い、むしろチキンレースのごとく付き合う松恵に、諸行無常などと受け入れている様で一切を拒絶する「女の目」。なめたらいかんぜよ。
2016/02/11
不羈
五社英雄監督が映像化した作品の原作。映画の方の解釈が養子となった松恵が任侠の世界に翻弄されながらも、人としての芯の強さを描き出したのに対し、原作は渡世の世界に身を置いた養女が流されるまま、その視点を通して1人の任侠のの時代の盛衰を描き出した作品である。エンディングの墓標に込められた思いが切ない。
2014/12/02
タカギ
『天涯の花』や『蔵』を読んで以来、20年ぶりくらいに著者の作品を読んで、こんなに説明的だったかな、とまず思った。大正から戦後までの土佐を主な舞台に、俠客一家の浮沈を中心に描く。任侠モノといっても、粋だと思う場面は一つもない。田舎ヤクザの鬼龍院政五郎は、見栄っ張りでひたすら生臭い。好きでその道に入った男たちはまだいいとしても、その周囲の女たちはただ不幸だ。特に月経の始末さえできないのに化粧は丹念にする花子の在り方には寒気がした。松恵も最後まで幸せにはなれず、最後の最後まで気が滅入った。
2018/06/10
プチライス
おどろおどろしいタイトルに手が出なかったけれど、読んでびっくりの面白さがありました。仁侠というあまりにもかけ離れた世界を養女・松恵目線で描いた物語には、男の強さと弱さ、女の苦しみと不憫が満ちていました。栄華、隆盛は短く過ぎて、やがて坂道を転がるように没落するさまが、美しくも悲しい「砂上の楼閣」、刹那の夢のように感じられました。
2011/07/06
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