潤一郎ラビリンス〈3〉自画像 (中公文庫)
潤一郎ラビリンス〈3〉自画像 (中公文庫) / 感想・レビュー
HANA
「自画像」と題されてはいるものの、著者自身の投影というよりは主人公である若者の懊悩を描いた作品だと思った。冒頭の「The Affair of Two Watches」は阿呆大学生の生態であり、何となく森見登美彦を連想させ面白く読めるが、「神童」がなかなか辛い。主人公が所謂中二病を発症ししかもそれが赤裸に描かれているため、何となく自分自身の一番思い出したくない時期を思い出させられるのね。自分自身の未来が栄光に包まれているのを根拠なく確信し、様々な事に懊悩するのもまた青春である事を思い知らされる一冊でした。
2021/02/12
KAZOO
小説なのですが谷崎自身の自己内面を非常に強く反映しているといわれる作品群です。これらの作品を読んでいると、結構自信家ではあるものの、もう少し世の中で有名になってもという気持ちなどの葛藤がよく描かれていると感じました。「鬼の面」というのも自分の内面のことを書かれているのでしょうが長編ということで外しているとのことです。読んでみたいと思いました。
2014/11/02
メタボン
☆☆☆☆ 谷崎は何よりも文章が素晴らしい。存分に名文に浸った。神童として英才を極めた春之助が堕落していく様が切実な「神童」。「異端者の悲しみ」は再読であるが、今で言うパニック症候群のような描写があり、谷崎も一時期そのような体験をしたのかと感じられた。田園での別れの別れの描写が美しい「詩人のわかれ」。ちょっとしたコメディの「The Affair of Two Watches」。
2018/11/30
蛸墨雄
流石である、潤一郎節に慣れたら、流れるように読み進めることが出来る。彼の書く『文章読本』があるが、本当に読みやすい文章であると感極まる。また、当時の大学生の生活が垣間見ることができ楽しい内容。当時は大学まで学ぶ人が少なく、たいそう貴重な人類であったのだろうと思われる。このまま迷宮に迷い込み抜け出せそうにない。次にはラビリンスⅣを手にした。
2017/08/29
桜もち 太郎
以前にも読んだことがあるが、やはり「神童」と「異端者の悲しみ」が良かった。他の作品も含めて「堕落」が主人公の人生に大きく影響を与えていた。特に「異端者の悲しみ」は作者自身によると自身の告白の書らしい。主人公の章三郎(谷﨑)の堕落した生き方の先に芸術があったことに本人の凄さがあることを知った。やはり谷﨑潤一郎は天才なんだろう。自分がこのような堕落した生活を送ってしまっても、間違いなく生まれるものは何もない。悲しい話だが・・・。
2013/07/01
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