潤一郎ラビリンス (13) (中公文庫 た 30-41)
潤一郎ラビリンス (13) (中公文庫 た 30-41) / 感想・レビュー
yn1951jp
『熱風に吹かれて』1913年。あらゆる不安と懊悩と恐怖とを跡方もなく焼き尽くしてしまう情熱を煽り立ててくれる女が欲しい。『捨てられる迄』1914年。恋愛は、血と肉とを以て作られる最高の芸術という理念によって、創り上げられた理想の女は、与えられた矛を逆しまにその恩人を征服。自信と誇りに輝く20代の谷崎の面影が彷彿する。漱石の『それから』と『門』を意識して書かれたのではと、解説で千葉俊二氏。『門』の侘び住いの結末に不満だった谷崎が、官能の熱風に巻き込まれる男女を描く、『刺青』を思わせる大正的作品。
2016/01/10
KAZOO
この巻には三つの作品が収められていてそれぞれ男女関係が主題になっているように思います。読んだ感じではこの副題となっている「官能小説」というよりは、男女間の愛情の機微などを谷崎独特の筆致で書いている気がしました。「熱風に吹かれて」は漱石の「それから」を意識して書かれたということのようです。最後の「美男」落語の笑い話のような感じでした。
2015/03/13
桜もち 太郎
官能小説ということだが、現代の安っぽい官能小説ではない。谷崎流の究極の官能小説だ。「捨てられる迄」の「恋愛の快楽と暴君の快楽と、孰れか一つを撰べ」は主人公山本と三千子の究極の関係が表れた一文だ。男尊女卑から女性崇拝に転換される山本と三千子の配置が絶妙。彼女に花を添えるために捨てられた自分は死ぬ以外にない、との考えは凄まじい。でも死なないけど・・・。二人とも演じているんだよね。谷﨑のこの性癖は「痴人の愛」そして晩年まで続いていく。性癖は芸術だ。
2015/08/08
しんこい
惚れた女と別れたくないと思うあまりにいじめられても従ったり、帝大出のエリートが無職なまま女と小田原で無為に贅沢に過ごしていたり、どれも恋愛でも官能でもなくこれが情痴小説でないかという気がしました。
2015/04/14
A.T
ここのところつづけざまに、潤一郎三昧。いやいや三昧などオコガマシイ数だが、作品ごとに趣向を変えサービス精神たっぷり。女を自分好みに改造するつもりが、女に奴隷扱いされて幸福を感じるまでになる好色男は短編ながらも読みごたえあり。
2014/09/15
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