潤一郎ラビリンス (16) (中公文庫 た 30-44)
潤一郎ラビリンス (16) (中公文庫 た 30-44) / 感想・レビュー
KAZOO
谷崎のラビリンスの最後は戯曲集です。かえって谷崎の小説よりも芝居用に書かれているのでわかりやすい気がしました。5つの作品では「白狐の湯」というのが狐憑きのような話で読んでいて民話的な感じもしました。「お国と五平」もよく上演されるものであるせいか安心して読んでいられます。「恐怖時代」はどうもどぎつすぎる感じがします。谷崎らしさが一番あらわれているのでしょう。
2015/04/16
ヨーイチ
戯曲、台本を読むって事が職業上の嗜みだった時期があって、その頃にこう言う素晴らしい企画の文庫本があったらどんなに良かっただろう。ただでさえ敷居の高そうな戯曲類は昔は分厚い全集本とかから抜粋して読むしか無かった。谷崎の戯曲の存在は主に演出家・武智鉄二(作家松井今朝子の師匠)の著書によって知り、古本を探していた時期があった。「無明と愛染」は上演前提で読んでいた。「恋を知る頃」は上演不可能と言われた作品だが、奇跡的に武智鉄二最後の歌舞伎公演で実見出来た。コレを見た人はあまりいないはず。続く
2023/04/24
ドイツ語勉強中
昨年の納涼歌舞伎で、谷崎の発禁本「恐怖時代」が33年ぶりに再演された。悪女を通り越して悪魔の妖気を放つ扇雀@お銀の方。サディズムに支配された妖怪の様な大人の男女に寵愛される、若衆姿に女形声が艶かしい七之助@伊織之介。原作は「鶏の砂肝のように粘り光る両手」「熱にとろけた飴のような顔の輪郭」などと血で血を洗うサディスティック戯曲。ト書の恐ろしさに、お銀の方の字余り気味のまったりとした台詞まわしのアンバランスさがますます恐怖を誘う。谷崎が自信を持っていたのも、発禁になった理由も、すべてこのト書だったそうだ。
2015/01/05
蛸墨雄
潤一郎ラビリンス、ついに完結。全16巻各々すごく楽しめました。最後のこの一六巻は戯曲集。各々の作品の時代に沿ったその時代の語り言葉がとても気持ちよく書かれておりました。谷崎のものを手軽に読もうと思ったら、新潮文庫ではなくて、中公文庫がおすすめ。三島は新潮文庫が揃っているけれど、谷崎は新潮社弱しといった感じ。
2021/11/21
訪問者
このシリーズもいよいよ最後となり、テーマは戯曲傑作集。「恋を知る頃」はとりわけ大傑作。当時としてもこのアン・ハッピーな結末は異色だろう。そして「恐怖時代」は登場人物が次々と死んでいく、非常に血なまぐさい物語。
2019/06/05
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