神様 (中公文庫 か 57-2)
神様 (中公文庫 か 57-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
川上弘美さんの記念すべき第1作目が、短編「神様」。パソコン通信上で応募し「パスカル短編文学新人賞」を受賞してのデビューであったらしい。あとがきで「もしあのとき『神様』を書かなければ…」とあるけれど、ほんとうによくぞ書いてくださったと思う。そのおかげで私たちは今こうして川上作品を楽しめるのだから。「くまにさそわれて散歩に出る」と、いきなり冒頭からのとぼけた味わいは、まさに川上弘美さんの真骨頂だ。ひらかなの柔らかさとしなやかさもまた一貫して彼女の味わいだ。9篇いずれも捨てがたいが、記念碑的な「神様」に敬意を。
2014/04/25
さてさて
『熊の神様って、どんな神様なの』。『神々しいような様子で、獣の声をあげつづけ』る『くま』に、そんなことを訊く主人公の『わたし』。9つの短編から構成されたこの作品には、それぞれに読者を魅了してやまない”不思議な「生き物」たち”が闊歩する物語が描かれていました。『人』のようでいて『人』ではない”不思議な「生き物」たち”がとにもかくにも気になるこの作品。そんな存在の描写に川上弘美さんの原点を見るこの作品。川上さんはデビュー作から川上さんだった、不思議世界のイリュージョンにただただ魅せられた素晴らしい作品でした。
2024/08/06
❁かな❁
はあ。大好きだなぁ。川上弘美さんの不思議でふわふわゆるゆるしたお話。デビュー作「神様」を含む9つのお話。いつも夢のような出来事が自然とわたしの身の回りでも起こりそうに思ってしまう。可愛くて切なくて温かい気持ちになれる。礼儀正しく優しいくまさんとピクニックに行きたいな♪小さな3匹やコスミスミコもとっても可愛い♡お気に入りは「神様」「夏休み」「星の光は昔の光」「春立つ」「草上の昼食」。「春立つ」のカナエさんの気持ちわかる。弘美さんの描く大人の女性好きだなぁ。くまさんのお手紙にわたしも少し泣いた。素敵な短編集♡
2018/06/12
ちょろこ
楽しいが溢れ出す一冊。まるごとすっぽりすごく好きな世界観。不思議が織りなす夢のような時間。否応なしに不思議たちがいざなう世界にすっぽり入り込み、文字を追うたび、それは"文字を追う楽しい旅"へと変わり、絶え間なく楽しいが溢れ出す時間。違和感ない不思議たちさんとのひとときは子供時代に本の中を旅した記憶、ワクワク感を見事に掴み、よみがえらせてくれた。くまとのさんぽ、白い毛の三匹との夏休み、河童、壺、人魚…どれも甲乙つけがたい。そしてごく自然にほんのり残る寂寥感。このさじ加減がまた絶妙。
2021/07/08
kishikan
ほう、表題作の神様が川上さん初めての活字になった作品ですか。なるほど。川上さんの小説って、ファンタジーっていうか、童話的、寓話的な要素があって、とはいってもそれに日常の軽いノリがあって、とても絵心あふれた(カラフルという意味ではなくて)小説が多いけど、この初期短編集はその特徴が良く表れていますね。それぞれ、強烈な印象を残すものはないけど(でも「離さない」は怖いし、「花野」「春立つ」は泣ける)川上さんらしい余韻を残す作品が詰まっています。それに絵本作家佐野洋子さんの解説の文章が素晴らしい。文庫の良さですね。
2013/04/29
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