本に読まれて (中公文庫 す 24-1)
本に読まれて (中公文庫 す 24-1) / 感想・レビュー
コットン
少々古いが広範囲なジャンルの日本及び海外の読書案内で小説以外に詩集や写真集や絵画又は映画関連もあり紹介の仕方が上手いので読みたくなる本が増えそう。『カラヴァッジオ 生涯と全作品』など数冊は読んでみたい
2024/02/19
寛生
【図書館】須賀の文章から漂う感覚が何とも言えない独特の色を放つ。翻訳者としての使命が本人にはどんなにか鮮明であっても、それがコトバとコトバの遣いとして、時には神と人間との通訳のように翻弄する旧約の天使のように、第三者の目には見えにくい存在なのだろう。本書も須賀が他者が書いた本を媒体としてのものだが、人間にとって大切なものが、例えば、美がいかに《つかめない》が伝わってくる。建物とその中に住む人間との関係。夫の死に川端が言及して、そこから小説が始まるという。結婚式で、人を育てるということの意味など。
2014/07/27
aika
透徹した考察それ自体がひとつの物語であるかのような書評集でした。初めて知る本ばかりで、翻訳者への敬意が随所に感じられます。自身の著作とはひと味違う一面が見られる一方で、タブッキと実際に会ったときのエピソードや、「コルシア書店」や「ガッティ」の文字を見た時は嬉しさを感じました。これまで隔たりがあった科学と文学をひとつの世界として著した池澤夏樹さんへの思いも印象的です。夫を1年前に亡くした須賀さんに、川端康成が「それが小説なんだ。そこから小説がはじまるんです。」と語った場面には言い様のない震えを感じました。
2021/06/17
Gotoran
久方振りに須賀敦子作品を満喫した。本書の中で、著者は、「言葉がほとんど絵画のような種類の慰めを持ってきてくれる、画家がくれるような休息を書物からもらうことがある」と書かれており、本をこよなく愛した著者が、最後に遺した読書日記でもある。バロウズ、タブッキ、ブローデル、ヴェイユ、池澤夏樹など、読む歓びを教えてくれる極上の著作と巡り合える一冊だった。夫々の作品に寄り添うように、ページをめくる著者の指先の温かさが感じられる文言に情感が溢れている。また取り上げられている幾つかの作品に当たってみたくなった。
2023/10/21
メタボン
☆☆☆★ 須賀さんの眼差しが深い。だから本に向き合って触発される心の動きをなぞるだけで、とても美しい文章になるのだろう。そんな物の見方、感じ方が出来るようになれば、もっともっと人生は深く美しいものになるのだろうと感じた。残念ながら食指が動く本はそれほどなかったが(まだ私には海外作品への関心が薄いのだ)、「本に読まれる」端正な時間を過ごすことが出来たと思う。
2019/12/02
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