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完璧な病室 (中公文庫 お 51-4)

完璧な病室 (中公文庫 お 51-4)

完璧な病室 (中公文庫 お 51-4)

作家
小川洋子
出版社
中央公論新社
発売日
2004-11-25
ISBN
9784122044432
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完璧な病室 (中公文庫 お 51-4) / 感想・レビュー

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さてさて

21歳で亡くなった弟の記憶を描く〈完璧な病室〉、呆けた祖母に逆に自身を見つめる〈揚羽蝶が壊れる時〉、同級生の死をきっかけに死に囚われだす〈冷めない紅茶〉、そして、孤児のリエの泣く姿を見る主人公の歪んだ感覚を見る〈ダイヴィング・プール〉という四つの短編が収録されたこの作品。そこには、今に繋がる小川さんの個性がすでに顔を覗かせていました。”モノ”にこだわる小川さんらしさに安堵するこの作品。静謐で硬質感ある表現にうっとりするこの作品。デビュー作から小川さんは小川さんだったと、なるほど感をとても感じた作品でした。

2023/01/09

ヴェネツィア

他の読者の賛同は得られないかも知れないが、「完璧な病室」は姉と弟との近親相姦の物語である。少なくても、その気配を濃密に漂わせている。そして、S医師とのセックスは、かなわなかった弟とのそれの代償行為にほかならない。あるいは、むしろセックスを経験しないで死んでいく弟への献花といった意味があったのだろう。「わたし」にとっては、病室こそが完璧な空間であり、その対極にある日常は汚濁した空間であった。そうしたパラドクシカルな小説世界がこの作品である。「揚羽蝶が壊れる時」は、シュールレアリスムとの親近性を思わせる1篇。

2012/12/10

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

今まで読んだ小川さんの作品で一番好きかも。すごくよかった。デビュー作含む初期の短編4編。 完璧な病室: 死の淵に立つ弟との病室での最期の時間。生きることの残酷さ、グロテスクさと対称に、死の描写は静かで悲しげで、どこまでも美しい。 揚羽蝶が壊れる時: ふたりきりで過ごしていた祖母が呆けたことで「自分の正常さが揺らぐ」奈々子。ページが進むにつれ正常と異常の境目が曖昧になる感じは秀逸。 冷めない紅茶: 中学の同級生と司書の先生の美しい生活。唯一ひたすらに優しい時間すぎてまるで白昼夢のよう。

2018/06/21

青蓮

繊細さの中に仕込まれた毒がある作品。作中には「弟を男として愛したという訳ではなかった」とあるが、作品の中に漂う官能的な雰囲気は近親相姦のそれであるように思う。病院が持つ非日常的な潔癖さが日常生活の猥雑さを際立たせていて、それもまたエロチックな香りを匂わせているように感じた。「揚羽蝶が壊れる時」は染みだす内面が易々と日常を乗り越える恐怖感があった。

2015/01/29

おいしゃん

小川さんの、もっとも初期の作品集。気持ち悪いけれど綺麗な小川ワールドは、この頃からちっともブレることはない。今の作品の方が、一般受けという面では秀でているかもしれないが、作風の変遷に想いを馳せてみるのも面白い。

2015/01/29

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