真昼の星空 (中公文庫 よ 36-2)
真昼の星空 (中公文庫 よ 36-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書は、かつて読売新聞の日曜版に連載されていたもの。そのせいか、いつもの米原万里さんに比べると毒が薄いようだ。字数が制限されていたことにもよるのかもしれない。いずれもエッセイとしてのできはいいのだけれど、米原色がもっと出ていればと思う。それでも、随所にはこの著者ならではの指摘があり、現代の日本を照射する鏡の役割は果たしている。ディズニーランドやブログのくだりは言われてみれば、まさにそうだ。そうだ!今回はロシア色とアネクドートが少ないのだ!したがって、米原万里さんをまずは1冊という人には本書は薦めない。
2015/04/21
Shoko
久しぶりに万里さんのエッセイを。現実には存在するのに、多くの人の目には見えないもの=「昼の星」から、本書のタイトルは来ている。物事を多面的に、問題意識を持って、常識といわれることに懐疑的に、自分のことは一旦突き放して…。ハッとさせられる考え方、言葉の数々に本作でも出会えました。ガガーリンの最期、第二次大戦時にレニングラードでは鳩が消えた(兵糧攻めで全部食べられた)、鉄のカーテンは実際にあった(18世紀ヨーロッパで舞台から客席にに火の手が広がるのを防いだ)などなど、逸話もたくさん。また読み返してみたい一冊。
2022/03/29
おさむ
読売新聞の日曜版の連載エッセイをまとめたもの。1998年から2001年という世紀末の連載なので、やや古びてしまったり、当時の予想を超えて現実が進んでしまったりする部分があるのは否めません。ただ、物事の本質を見抜く慧眼はさすがです。ディズニーランドを消費社会の縮図であり、消費文明先進国の米国社会であることの指摘。コミュニケーションにおいて量と質は反比例するという箴言など、あとがきで小森陽一さんが言うように、やはり「稀代の語り上手」だと思います。
2018/09/15
阿部義彦
米原万里さんの新聞連載のエッセイ集。一つが2頁から3頁なので何処からでも読めてしかも面白い通勤時やトイレのお供に最適かも?ツバキ姫(米原さんのニックネーム)にまつわる米原さんと父上との心あたたまるやりとりにじーんとしました。
2016/07/16
びっぐすとん
108円本。未読の米原さんのエッセイを見つけて購入。新聞に掲載されていたもので、一編一編がかなり短めのエッセイ。「下ネタ、イデオロギーネタはご法度」ということで、米原さんのエッセイにしてはおとなしめだが、山椒は小粒でピリリと辛い。ソ連の宇宙飛行士ネタなど米原さんならでは。お国変われば美人の物差しも変わるなど帰国子女らしいし、ロシアと日本、どちらについても知識深く、偏りがない、公正な視点がこの人の持ち味だなあと思う。日ごと年ごとに目まぐるしかった平成を総括してもらいたかった。つくづく早世が惜しまれる。
2019/01/03
感想・レビューをもっと見る