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徴用中のこと (中公文庫)

徴用中のこと (中公文庫)

徴用中のこと (中公文庫)

作家
井伏鱒二
出版社
中央公論新社
発売日
2005-08-26
ISBN
9784122045705
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徴用中のこと (中公文庫) / 感想・レビュー

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さっと

陸軍徴用で赴いた主に日本占領期のシンガポールにおける身辺雑記。文中に出てくる昭南島よりもジョホールバル(サッカー)やチャンギ(空港)に反応してしまう戦後生まれのわたし。ますじいは当時40代半ばの中堅作家(直木賞もとってる)で、このときの体験を戦後にいくつかのエッセイや短編に物してるが、80を超えてから、このあまりにも素っ気ないタイトルで再び書き出した。時系列ではないし内容の重複もあって読みやすいとは言えないけれど、解説の植民地文学という捉え方にはメカラウロコ。同系統の「花の町」「南航大概記」を探そう。

2023/07/07

Kemumu

陸軍報道班として徴用された井伏がマレー戦線や占領期シンガポールの体験をまとめたもの。参謀辻政信の描写に強く心情がのっている。数千人の被害者がいる華僑粛清と首謀者であろう辻参謀を思いながら、「人間があのやうな広大無辺の罪を犯すことがあるとは意外であつた」という。本作の発表は戦後に参議院議員まで勤めた辻が亡くなった後の70年代だ。作者は辻の著作「ガダルカナル」を読んでいる。辻参謀が空腹で倒れている兵士に食事を分け与えるのだが、井伏はそれは「戦友同士のすることだ」と書いている。強烈な皮肉と憤りを感じた。

2024/08/14

yagian

太平洋戦争中に陸軍に徴用されマレーとシンガポールに転戦した井伏鱒二の体験記。いつもの井伏流の書き方だから、太平洋戦争の背後にある歴史は別の資料から把握しておかないと、行間を読み取ることは難しいかもしれない。

2014/10/11

AR読書記録

偶然,猪瀬直樹『ピカレスク』で「盗作(盗用)作家」という印象を持ってから間をおかず,読むことになった.でもさすがに体験談だからなあ,と思っていたが,かなり,他人の文章などを引用している部分が多い.ことわってはいるんだけど,それにしても多い感じ.「自分はこうだと記憶していたが,他の人はこう書いていたのでそうらしい(以下引用)」とかいうことも多い.なんだかいろいろ信用ならなくなってくるが,つまり,これがこの人なりの物書きのスタイルってことかと思う.ところで内容だが,案外平和で友好的な植民地ライフ.うーむ.

2011/05/13

フリウリ

●海音寺潮五郎がサイゴン川に落ちる。マレー宣伝班員たちのゴシップ。「海音寺さんは岸壁にすがりついたとき、わいわい騒ぐ人たちを叱って「ものども騒ぐな」と言ったと言い伝えられていた」p88●宣伝班員をなじる中尉に暴力をふるう中島健蔵 p163●馬と同様、人間も一人で生きていくのは孤独に耐えられない。群れをつくる本能で、いやいやながらもマレーに持って来られると、脱走したいという気持ちを自然になくしてくる p205●「ピストルの音は、新聞社の特派員が暴発させた音でした。転落の詩集です」p230 6/10

2020/09/19

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