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海のふた (中公文庫 よ 25-4)

海のふた (中公文庫 よ 25-4)

海のふた (中公文庫 よ 25-4)

作家
よしもとばなな
出版社
中央公論新社
発売日
2006-06-01
ISBN
9784122046979
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海のふた (中公文庫 よ 25-4) / 感想・レビュー

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おしゃべりメガネ

この時期だからこそ、読むべき作品をドンピシャのタイミングで読むことができ、本当に幸せでした。いつもばななさんの作品を読了して、直後に思うことは「本当にやっぱりこの人って天才なんだな」と感じます。いともたやすく、何でもないように書き綴っているかのような文章が素晴らしいのです。人間の持つちょっとダークな部分もサラリと書き上げ、まるっきり何もなかったかのように平和な雰囲気に仕立てる術はもうお見事としか言えません。今作は版画家「名嘉睦稔」さんの挿画もおさめられており、またその挿画が本作をより際立たせています。

2017/07/22

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

西伊豆の海は澄んでいる。透明な海に入るとすぐ近くを泳ぐ大きな魚きらきら、太陽に反射してきれい。温泉街、花火大会にかき氷。錆びたシャッター、波の音。潜った海から見あげる水面は天空のようこのまま死んでもいいかも、なんて嘘。 思い出が積み重なって思い入れがどんどん深くなって、”昔はよかった”とか言っちゃうんだろうなぁ。それはいいことでもあり悪いことでもあるような。自分がきもちいい基準でいればいいのかな、と思ったり。ばななさんが教えてくれる指標はシンプルなようでいてなかなかどうして難しいのです。

2020/07/22

ヴェネツィア

ブルース・ベイリーの仲人による、よしもとばななと版画家、名嘉睦稔のコラボレーションで誕生した本。26点の絵は、いずれも版画特有の黒が力強く、またそれらが常に影を意識させるために、海辺の町の日常が淡々と描かれていく小説の背後にも陰翳を与えている。西伊豆の土肥を舞台に物語は展開するが、そこでは寂れていった町への郷愁と強い愛着とが心をこめて語られる。大きな出来事は何も起こらないし、主人公であり物語の語り手であるまりと、はじめちゃんとのひと夏の交流が描かれるだけなのだが、そこにはほのかな輝きがあるようなのだ。

2012/10/18

アン

故郷の西伊豆に戻った主人公のまりと、最愛の祖母を亡くしたはじめちゃんのひと夏の物語。寂れてしまった町でささやかな夢を叶えようとするまりに心を開いていくはじめちゃん。大切な自分の居場所や尊い出会い。「小さな愛が刻まれた場所は、やがて花が咲く道になる」ばななさんの紡ぐ文章は、言葉にするのが難しい気持ちをそっと掬い上げ、淋しさも受けとめ、日常にある愛おしさを見つめています。版画家・名嘉睦稔さんの鮮やかな挿画26点も収録。波音が心地良く響き、金色の粉が降り注ぐ眩しい海へ想いを馳せて。

2020/04/25

はたっぴ

表紙の絵に惹かれて読了。名嘉睦稔さんは『地球交響曲』で知った沖縄の版画家。神話を語り、風の音や鳥の言葉を理解し、自然や動植物からのメッセージを作品で表現する地球人だ。そんな睦稔さんの絵とばななさんの物語がコラボしていたとは知らなかった。西伊豆の海の美しさは体験済みなので物語にも馴染みやすかった。睦稔さんの絵とノスタルジックな西伊豆の風景が溶け合うように、主人公のまりとはじめの友情が緩やかに芽生え、ひと夏をかけて交わっていく。お二人の魂が共鳴して生まれたこの本を読めたことが、今夏の大切な思い出になった。

2016/09/04

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