絶海にあらず (上) (中公文庫 き 17-8)
絶海にあらず (上) (中公文庫 き 17-8) / 感想・レビュー
眠る山猫屋
再読。平将門ではなくて藤原純友を描く辺りが北方先生らしい。やりたいことも無く欲も無く、無為に過ごしていた純友が、旅を経て少しづつ変わっていく。流されるように任官した伊予で出会った人々や、政の理不尽。抜群に頭が切れる訳でも腕が立つ訳でもない純友が生きたいように生きていくうちに、次第に都の藤原一族に刃向かうまで。〝海〟を舞台に、政治の隙間を突くように海賊を偽装し物流を生かして立ち向かう様は気持ちが良い。坂東は戦乱、都は権謀術数と大変だが、伊予から西の海はどこまでも爽やかだ、今のところは。
2019/08/16
Haru
矢野さんの「平将門」を読んで、北方さんも同じ時代を書いていたじゃない!と再読。冒頭の洪水に見舞われる京の陰鬱な雰囲気から、あっという間に物語の中に。鬱々とした京から、潮風爽やかな伊予ヘ。感じたまま自由に行動する純友は藤原北家の血筋の良さ、勧学院で書物を好むインテリさと、豪放磊落さが相まって、みるみる内に水師をまとめあげる。「当たり前のことを当たり前にするために」、藤原北家の権威なんてくそ食らえと突き進む純友に悲壮感はないけれど、これから好古さんが絡んで、だんだんと追い詰められていくのかと思うと辛いなぁ。
2016/03/13
はらぺこ
上巻なので大きい動きは特に無くて静。 北方作品は歴史モノだけ何冊か読んでますが、作者の風貌に見合わず主人公の口調はオラオラ系じゃなく優しい人が多い気がします。この藤原純友も今の所そうです。 下巻が楽しみです。
2011/06/14
フミ
平安時代の西暦930年代終わり頃、瀬戸内海で反乱を起こした「藤原純友」を主人公にした小説です。前に読んだ「楠木正成」同様、人物の目線と会話で、どういう経緯で伊予の国(愛媛県)に赴任し、人脈、船や兵力などの勢力基盤を育てて行ったかが、じっくりと描かれていく感じで楽しかったです。 主人公が冒険心、好奇心あふれる「藤原一族の変わり者」として登場するのですが、こういう「自分で道を切り開きたい人」には「何もしなくても旨い汁が吸える場所」というのは、許せないのでしょうね。上巻は下準備という感じで、先が楽しみです。
2022/10/18
うまとら(仕事が多忙のため休止中)
爽やかな読み応え。純友の男っぷりが良い。当時、隆盛を極めた藤原北家の傍流として生まれながら、伊予で活躍する姿が生き生きと描かれている。筆者の小説につきものの山の民も出てきますが、今回は海の民の話です。海は誰のものでもない。良いですね。相変わらずの北方節です。
2010/05/26
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