花嫁化鳥 改版 (中公文庫 て 2-2)
花嫁化鳥 改版 (中公文庫 て 2-2) / 感想・レビュー
夜間飛行
何かを隠し続ける島人や民俗学者と対峙しつつ、少女・片目の漁師・老婆の話から祭の秘事を探っていく「風葬大神島」。夢の中で金田一耕助と推理談義を交わす「比婆山伝説」。人間同士の醜い争いをよそに犬神憑きの男がひっそりと犬猫病院を開業する「闘犬賤者考」。無縁仏の遊女をみな知り合いだと言ってのける「浅草放浪記」。按摩が盲目なのは彼らが《人生の観客になることを怖れた風土史の知恵》と言いながら、指宿まで花嫁達を見に行く「花嫁化鳥」。どの話も少しずつ嘘っぽくて、寺山でなければ書けないぎりぎりの線を浮游している感じがいい。
2019/03/11
HANA
キリストの墓や闘犬、鯨の過去帳等、日本全国の奇習や変わった物を訪ねる旅。題材だけでも魅力的なのだが、どの文章にも独特の情念と土俗がまとわりついている。それがいかにも七十年代だな、と思うと同時に、読んでいるうちにいつしかこの日本とは違う日本に誘い込まれている自分に気がついて愕然とする。寺山修司読むのは初めてだけど、どの作品にもこのような日本的な湿気がまとわりついているのならば、自分のようなウェットな人間にはその雰囲気がたまらないので、今後とも作品を読み進めてみたいです。
2012/11/02
UC
久しぶりに寺山修司。紀行文であり、フォークロアであり、時々競馬。なんとも寺山修司らしい。創作活動の一環として地方を巡っていたということか。 個人的には浅草の話がお気に入りです。あと表紙の絵は竹久夢二なのですね。
2018/08/05
じめる
最初の「風葬大神島」が最高だった。近親相姦を繰り返しながら様々なタブーを作りあげて暮らす閉鎖された離島の秘事。滾る。地図が各章の最初に載っていてどこの出来事なのか分かるのが現実味があって、旅行記として堪らない。
2012/11/02
散歩いぬ
再読。前回は昭和の風景イメージの共感について思ったが、今回は土俗を呪術的に還元しようとする著者の寂しいようなセンチメンタリズムが印象に残った。消し去ることのできない血の絆。親子であり、閉塞した地域であり、見世物小屋の因果譚であり。その元を辿れば著者が思春期に別れた母がいるような気がする。いつ開いてもその時々に違った感想を抱かせる本だ。
2012/08/22
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