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おはん,風の音 改版 (中公文庫 う 3-14)

おはん,風の音 改版 (中公文庫 う 3-14)

おはん,風の音 改版 (中公文庫 う 3-14)

作家
宇野千代
出版社
中央公論新社
発売日
2008-12-20
ISBN
9784122050846
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おはん,風の音 改版 (中公文庫 う 3-14) / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

宇野千代の代表作2編。「おはん」は2人の女性の間で揺れ動く気弱な男性を、「風の音」は夫の愛人と同居することになった胸中を描いている。どちらの物語も世の常識では考えられない世界だ。それでも世の常識や道徳からはみ出して生きようするのも人間の性の一つなのかもしれない。そこに光を当てるのは文学の仕事だと思う。やわらかで余韻のある文体が素晴らしい。日本語の美しさを存分に味わえる。同時にこの文体は強靱さも秘めているような気がした。恋多き人生を生き抜いた宇野千代の人生が、反映されているのではないだろうか。

2018/05/31

Gotoran

天風師に師事した著者が書き綴った、独特の訛で語られる独特の世界(2編の女の情愛の物語)。「おはん」:別れた女房おはんと妾の芸者おかよの間で揺れ動きやがて悲劇を招く、弱く、情けなく、分かてはいるが改められない優柔不断の男の独白、懺悔。終盤のおはんの手紙が印象的。「風の音」:女房おせんが語る、自由奔放、身勝手な婿養子の夫と妾との奇妙な共同生活。甚振られ、翻弄されながらも耐え忍ぶ在り方に、現代では理解し難い情愛の極みを感じた。2編とも一見弱い女性が描かれているようであるが、弱さを超越した懐の深い強い女性ではと。

2013/04/06

長年別居している気弱な妻・おはんと、同棲中の芸者の愛人・おかよ。どっちつかずの態度のまま二人の女の間で揺れ動く幸吉の言動は、客観的に見て殴りたくなるようなクズ男だけど、文章全体に品の良さやしとやかさが漂っているため、不快な感じはしない。むしろ惹き込まれるから不思議。どこか自虐的な幸吉の語り口で描かれる悲劇的な物語の結末はやりきれない。幸吉の息子の悟が無邪気で、いい子で、泣ける…。しかし、どう見ても情けない男なのに、女子供から慕われる幸吉って、実はとんでもなくいい男なのかしら。道理でなんだか憎めないわけだ。

2021/04/29

多津子

岩国に旅行に行くことになった。宇野千代は桜のハンカチなどを持っていたが、読んだことはなかったので代表作を。あの時代らしい、自分勝手な男とおとなしい妻と気が強い妾の話が2編。妻はどちらも育ちが良く控えめだけれど、作者自身は恋愛に奔放というか自分の心に正直なのが面白い。この時代の女流作家って、私生活はエネルギッシュな印象。因みに宇野千代生家は苔の庭がとても美しかった。

2023/05/28

鏡子

風の音、おはん、ともに、奉仕する女の話。私なぞは浮気など言葉を聞いただけでも狂いださんような嫉妬心の持ち主なので、この2人の心は到底解せないが、この2人の姿勢こそが、浮気をされようが、相手が好きなことをしているのが心底嬉しい、と思うような、下手すると変態性とも呼べるのではないかというような姿勢こそが、愛の本来の形なのでしょうと思いました。

2013/03/05

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