昭南島に蘭ありや 上 改版 (中公文庫 さ 45-8)
昭南島に蘭ありや 上 改版 (中公文庫 さ 45-8) / 感想・レビュー
まつうら
日本軍のマレー作戦によって、シンガポールが昭南島と改名されていく時代を描いた作品。マレー作戦を含めた南方戦線は、アジア民族の解放だと言われている。しかし著者は、ならばどうして中国の主権を尊重しないのだと、鋭い舌鋒を奮う。大東亜共栄圏なんて見せかけの張りぼてで、英米をまねて帝国主義に突き進んだだけが、当時の日本の本当の姿だという著者の主張を強く感じる。最近は、百田尚樹作品とかで歴史修正主義も幅をきかせているが、いったいどっちが真相に近いのだろうと考えさせられた。(下巻へ続く)
2021/11/14
マムみかん(*感想記入少なめです*)
シンガポールが昭南島と呼ばれた時代の、戦争冒険サスペンス。 巻き込まれ型主人公は、日本統治下の台湾生まれの客家の青年。 太平洋戦争開戦で、自分の国籍や血、出自に翻弄され、悩みながら生き抜いていく様が痛々しいです。 上巻は、日本のシンガポール占領まで☆
2022/05/21
rokubrain
第2次世界大戦は、日本においては、太平洋戦争、あるいは大東亜戦争とも呼ぶ。 前者は地域的な呼称だが、後者は当時の日本の思想的な意味合いも加味されている印象がある。 よって今はあまり好んで使われないのかもしれない。 今回は、そんな大東亜戦争の側面をシンガポール(昭南島)を舞台に描いた作品だった。 絶妙な登場人物たちの配置が当時の置かれていた空気感をリアルに作り出している。
2024/02/18
あおひな
自分が今住んでいるところなのに、ほとんど何も知らなくて恥ずかしくなった。もっと戦時中の様子を知りたい。
2013/08/17
tegi
昭和16年の日本人はかようにモダンで国際的でありつつも愚行の連続を止められなかった。佐々木譲の筆致はいつも品がよく、そこに歯がゆさがないとは言えないが、このようにスマートに描かれてこそ、「蛮行を犯す人々の相貌は決して野蛮ではない」ということがわかるのだと思う。
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