昭南島に蘭ありや 下 改版 (中公文庫 さ 45-9)
昭南島に蘭ありや 下 改版 (中公文庫 さ 45-9) / 感想・レビュー
まつうら
(上巻の続き)主人公の梁光前は、台湾生まれながら日本で教育を受け、日本の商社に勤めていたが、ひょんなことから抗日華僑の仲間に入って日本軍と戦うことになる。成り行き上仕方ないのは理解できるが、おいおいそんな半端な行動で大丈夫かと思ってしまう。そうしたら案の定、華僑からも日本の憲兵隊からも目を付けられて、光前は苦しい立場に追いやられる。だから言わんこっちゃない! 佐々木譲作品には珍しく、光前は男臭くてカッコイイ主人公ではない。しかしその分、シンガポールの街並みや時代に翻弄される諸民族の描写が興味深いと思った。
2021/11/14
rokubrain
シンガポールで知り合いの日本人の商社で働く台湾生まれの青年 梁光前のアイデンティティはどこにあるのか? 華人には華僑社会があり、大本の祖国は国民党と共産党で割れている。出身の台湾は日本帝国統治下にあり、自分は帝国臣民である。それらの個人的な複雑な事情が、シンガポールやその周辺が置かれていた複雑な国際状況に相まって、新たな「大東亜」での戦争状態が作られていった。そして首相であり陸軍大臣である東条英機が改名した昭南島に歴訪にやってくる。本当の昭南島の蘭は何だったか?佐々木さん一流のヒューマニズムが流れていた。
2024/02/18
ちゃま坊
太平洋戦争時のシンガポール。日本人、台湾人、華僑、英国人、インド人らの登場する冒険小説。東条英機にも暗殺未遂があったのか。★★
2016/09/08
あおひな
蘭の意味が奥深かった。
2013/08/18
マシンガン
戦後秘話3部作もそうだが、作者は人種や立場が微妙な人物を主人公に据えることによって、日本や相手国、戦争の本質をフラットに描くことを得意としている。哀しさや切なさを伴いときに抗いながら、時代に流される人々。昭南島の蘭は果たして、栽培された美しきランか、ひっそりと咲く野生のランか…。
2012/11/13
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