一階でも二階でもない夜 - 回送電車II (中公文庫 ほ 16-2)
一階でも二階でもない夜 - 回送電車II (中公文庫 ほ 16-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
エッセイ集『回送電車』の第2集。堀江氏も篇中で語っているが、エッセイこそは制約がなく語れるスタイルとのこと。発表誌はさまざまで、したがって個々の長さも違うのだが、いずれの語りも自由でのびやかだ。また、ここでも何度か言及される須賀敦子さんのエッセイが彼のある種の理想の姿としてあるようだ。静謐な抒情を喚起するという点では共通項も感じるが、堀江氏のエッセイは沈潜することなく軽やかに滑空してゆくようだ。日常を描きつつ、そこに家族や友の影がないのも、このエッセイの特徴。彼はどこにいても一人を楽しむタイプなのか。
2015/03/05
KAZOO
堀江さんが様々なマスコミ誌に発表したエッセイを一冊にまとめたもの。特に私が気に入っているのはこの巻ではかなり本に関するものや文房具に関する事項が多いことです。「ジャム詩集」に夢中になったり、ロットリングの万年筆を後生大事に使っていたり、鉛筆をすごく短くなるまで使ったり、私には楽しい話でした。
2015/05/25
chanvesa
『夜と霧』の新訳について肯定的な評価が書かれていて、いつか手に取ろうと思った。須賀敦子さんが亡くなった時、私は学生で名前も知らず、たまたま取っていた授業で須賀敦子さんが亡くなったから是非読むべしと先生に言われたことを思い出した。特に印象的だったのが「座礁鯨のゆくえ」。「不器用なまつりごとに翻弄されて行き場をなくしたいまの私たち」という遠回しながら危機感溢れる言葉のチョイスが素晴らしい。「トカトカトン」は警告として、気を付けなければならない。「○○になります。」も私自身同様に使用を注意している。
2017/01/04
長谷川透
堀江敏幸の文章は句読点を多用した長さが特徴だが、呼吸を整えることの場所が幾つも用意されており、読んでいて息が詰まってしまうことは全くなく、心地よくさえある。冒頭の「静かの海」には、街の中の建物の狭間にある小さな公園の居心地のよさが記されているが、この著者によって文章の中を案内される読者のために、彼は幾つもの居心地のよい休憩所を作ってくれている。そして、「さて」とベンチから腰を挙げると嘆息するような絶景では決してないが、小さくて目立たなくて、それも一瞬の内の光景であっても、素晴らしい一コマが見えてくる。
2013/10/31
くるみみ
4つのパートに分けられているエッセイ集。久しぶりに堀江さん!と思って読み始めたのでⅠはエッセイではなく短編かと思って読んでいた。Ⅱで獅子文六を取り上げている1編が嬉しかった。ⅡからⅢ、そしてⅣへと少しずつ堀江氏の身辺に纏わる話へとまとめられている。タイトルと書き出しからは思いも寄らない道を通り意外な景色や人を見せてタイトルへと着地したり総評であったりするのがやっぱ好きな文章だなぁと思う。
2022/12/25
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