ボートの三人男 改版 (中公文庫 シ 1-2)
ボートの三人男 改版 (中公文庫 シ 1-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
これはもう、あらゆる意味でイギリスらしい小説である。この小説の出版は1889年。彼はオスカー・ワイルド等と同時代人でもあり、世はまさに世紀末なのだが、ここにはそんな影はどこにもない。徹頭徹尾明るいのだ。ロンドン南部のキングストン・アポン・テムズからオックスフォードまでのボートでのテムズ川の旅を描くのだが、そこでの最大の関心事はイギリスの歴史である。例えばマグナ・カルタ島はヘンリー8世がアン・ブリンとが密会した場所であるといったふうに。一方ここでのユーモアの構造は、終始一貫徹底した脱線と誇張に置かれている。
2015/06/14
遥かなる想い
気分転換のため、テムズ 河をボートで行く三人の男の物語。 丸谷才一の巧妙な訳が 笑いを増幅させる。 時代の風景なのか、英国の 風景なのか…のんびりと した旅が、のどかで羨ま しい。 英国の地理に疎いため、 視覚的な映像が浮かばず 立ち位置がわからなくなる のが、残念… 脱線の連続のこの紀行文、 軽く読むにはちょうどいい のだろうが、正直私には 馴染めなかった。
2015/08/01
こーた
三人の男たちは、寄り集まって相談したすえ、ボートに乗って休暇を愉しむことにした。犬をともない、テムズ河を遡ってゆく。櫂を漕いで、綱を曳いて。さっきから考えているのだが、どうも必死にボートを漕いでいるのはわたしだけで、ほかのふたりは何もしていないじゃないか。犬は薬罐とケンカをしてひとり大騒ぎしてるし。くそう。きみたちも少しは働いたらどうだい。え?ボートを漕いでいるのは自分だけで、何もしていないのはきみたちのほうだって?そういえば、こんな一日が以前にもあったような。そうそう、あの日はきみが……。⇒
2018/06/26
KAZOO
とても今から100年以上に書かれたとは思えない感じです。何度か読んでいますがいつ読んでも何かゆったりした気持ちにさせてくれます。3人と犬が1匹のボートでの中での言葉のやり取りが中心ですがみな勝手なことを言いつつもぎすぎすした感じを受けないのは書かれた時代性なのでしょうか?そういえばコニー・ウイリスのSF作品にも出てきました。「犬は勘定に入れません」
2015/10/15
ケイ
主人公を含む3人の男と犬一匹による19世紀のテムズ川下り旅行記。最近読んだディケンズのピクウィック・クラブを思い出させる語り。話は脱線につぐ脱線で、気を付けていないと、位置を見失いそうになることも! そして理屈っぽい語りによるコメディ。何かが話題に出ると、3人と一ぴきの誰かがそれにまつわる話を思い出し、話は横道にそれて発展していってしまい、戻るのに時間がかかるのだが、そこがおもしろいところだ。丸谷才一氏の訳が、これまた読みやすくていい。
2015/06/30
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