廃帝綺譚 (中公文庫 う 26-4)
廃帝綺譚 (中公文庫 う 26-4) / 感想・レビュー
GaGa
家族が言うには、私は時折自分でも気づかぬ時に声に出して読んでいるらしい。特にこの宇月原ワールドに浸っている時ほどひどいらしく、リビングでよく朗読するが何がなんだかわからないと子供に気味悪がられる。「鐘を叩く。非常の鐘が鳴り響く。鐘を叩くさらに強く。鐘を叩く。割れんばかりに。鐘を叩く。やむことなく、鐘は緊急非常の音を城内に響かせ続ける。鐘を叩く。鐘を叩く」妻から中原中也を読んでいるのかと聞かれた(笑)
2010/11/17
藤月はな(灯れ松明の火)
「安徳天皇漂海記」とも繋がりのある因縁深き珠と秘されたマルコ・ポーロのとある神秘に触れた書に翻弄された憂き目の帝王と国の物語。モンゴル人でも漢族でもある己の拠り所を王位に求めた元朝の順帝はクビライという前例から王位を簒奪されるのではないかと疑い、愚を重ねる。彼が王者ではなく、一般の者ならば浅ましい自分を見ることはなかっただろう。そして明朝の永楽帝は最愛の甥を儒家らによって死に追いやる羽目になってしまったことを悔やむ。互いの幸せを願っていたのに王位に就くしかなくなった彼と見つめてきた鄭和の忠誠に心震える。
2013/06/04
KAZOO
安徳天皇漂流記のスピンオフ作品だそうです。この作者はよく参考文献などをあさり、しかもそれに囚われずに自由な空想の世界へ連れて行ってくれることが作品の魅力になっていると感じます。実朝の役割をうまく作り上げていると感じました。
2014/06/21
鯖
安徳天皇漂海記と続けて読むと、後鳥羽帝なんぞまだまだ甘いと思ってしまう。安徳天皇が、実朝が辿り着いた先、その鎮魂の場所に崇徳帝も連れていってやれないものかなあと思った。
2015/03/21
モヒート
マルコ・ポーロの遺した記録書と奇跡の証拠を軸にした元~明の栄枯盛衰と、安徳天皇の異母弟・後鳥羽院の壇ノ浦以降の運命、二つの後日談が読める『安徳天皇漂海記』続編。君主でありながら無力感・虚無感・慚愧の念に苛まされる、非常に人間味溢れる登場人物らの生涯に引き込まれた。元と言われてもフビライしか思い浮かびませんレベルでしたが、こういう終わりかたしたのか。『無いもの扱いの子』モチーフの使い方と、神話と史実の繋げ方本当に上手いなあ。
2015/12/31
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