白檀の刑 (上) (中公文庫 モ 9-1)
白檀の刑 (上) (中公文庫 モ 9-1) / 感想・レビュー
遥かなる想い
ノーベル文学賞作家莫言の作品。清朝末期の中国処刑人を生業とする一家がドイツ人の暴虐に立ち上がり・・という話だが、訳のせいなのか 文体がややくどい感じ。下巻の盛り上がりに期待。
2012/12/02
長谷川透
裏表紙の粗筋だけを読めば、西洋列強に国土を蝕まれ日清戦争の敗北後の新王朝の没落、そして列強統治による暗澹たる市民の生活を色濃く精緻に書かれた小説を想像してしまう。実際、処刑の描写はおぞましく、慄く場面も多かったが、物語は荒唐無稽であり、この界隈に生きる人物はほとんど例外なく滑稽で暗い時代に生きているとは思えないほど勢いがある。『白檀の刑』という題名の重々しさとは裏腹に、気構えて読む必要など微塵もない。ノーベル文学賞の候補に挙がる前には全く知らなかった作家であるが激動の渦中で執筆している作家の勢いを感じた。
2012/10/24
そふぃあ
残虐で汚くて口が悪いけど面白いなと読んでいた。けれど処刑の章は読みながら手が震えて身体がサーッと冷えてくのが分かって、その後しばらく怖くて動けなかった。怖がりなので事前に凌遅刑とは何なのかWikipediaで調べて読んだのだが、概要だけを知るのと具体的にどんなやり方でどんな様子で処刑が進むのか知るのとでは天と地ほどの差があることを思い知った。処刑人はただ残虐なのではなく、職人の高度な技や心持ちが求められることがこの本には記してある。しっかりやらなければお上の怒りを買い処刑人自身の首が飛ぶことになるからだ。
2024/02/28
田中
「趙甲」は都でその名を轟かせている最高位の処刑人。「銭雄飛」をきっちりと第五百刀で息を途絶えさせるシーンは、凄惨すぎて読むのが苦しくなった。こんなに酷い死刑とは恐ろしい。そして熟達した神業のようだ。嫁と子供がドイツ兵に殺められた「孫丙」は復讐に決起する。不条理で残酷な場面がおおいが、その人物の心象をふかく叙述し、重層的に人々が繋がるのだ。滑稽な所業を描写し人間の本質を揶揄するところもあって面白い。「髭くらべ」では、その髭の特質で白黒付ける場面は愉快だった。平易な文体で視覚的であり引きこまれる一冊だろう。
2023/12/17
taku
清朝末期を背景にする視点。その細胞に文化を受け継いでいる人のセンスは一味違う。一人称語りの旋律が哀切を奏でる多声音楽。内なる想いも、絡み合う感情も、処刑の場面も、この時代が全てを協和させる。血と汗と涙を流し、臓物に糞まで小道具にする泥臭い舞台。猫腔の歌が聞こえるこの小説は莫言が演出する大芝居。傑作の予感。
2018/05/31
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